ある大手直販メーカーの社内データによると、OTC薬の中で第1類薬を取り扱っていた店舗は、改正薬事法が施行された2009年6月以前と比べ約2割減り、店舗数にして約1800店舗減少しているという。多くが薬剤師の配置を必要としない、いわゆる店舗販売業へ移行しているのだろうか。
第1類薬に分類された品目は、従来取り扱えていた店舗でも、薬剤師による対面販売が規定されたことで、改正法施行後に何らかの都合で薬剤師を配置できなくなり、取り扱いを止めざるを得ない状況になる店舗も出てくることは、ある程度予想できた。しかし、1800店舗という数字はある意味、予想を超えている。
その一方で先月末、日本OTC医薬品協会が公表した第1類薬の販売状況調査では、改正法施行後、低調だった販売金額が、1年後の10年6月以降、下落に歯止めがかかった状態で推移していることが示された。同調査によると、第1類薬の販売金額は09年6月は35億4000万円と前年比17・3%減となり、その後10年5月までは低迷を続けた。10年6月以降は前年同期を超える月もあるなど、前年並みをキープしている。
また、同調査を行ったインテージのSDI分析では、市販後調査期間終了後に第1類から第2類へ変更されたものを加えた「第1類+元第1類」の合計販売金額は、11年1月以降は前年を大きく超えて伸長していた。
さらに、第1類薬取り扱い店舗も、薬事法改正後の低下から、11年6月には73%と、ほぼ下げ止まった状況にあると分析。販売店当たりの金額も11年6月に9万8000円と、年々上昇傾向にあり、第1類薬の販売店では順調に推移していることも示された。
冒頭のメーカーデータと対比すると分かりやすいが、第1類の販売を取り止めた多くはドラッグストア企業で、比較的高賃金の薬剤師を第1類薬販売に従事させるためだけに雇用するほど、第1類薬の需要が多くないという経営判断によるものが多いのかもしれない。
逆に現在、第1類薬を取り扱う店舗は、取り止めた販売店の影響で、1店舗当たりの販売金額が伸長しているということなのだろう。ただ、セルフメディケーションに有用とされる第1類薬の販売が、物販品並みに販売店の経済合理性のもとで左右されるという状況は、地域生活者にとっては好ましくはないはずだ。
第1類薬の販売店減少は、生活者からすれば、医薬品のネット販売を是とする方向に拍車をかけることにもなりかねない。OTC薬の販売においては、医薬品分類に関係なく、対面販売による適切な情報を提供し、安全性を確保することが、本来あるべき姿だろう。
販売者側から、購入者側へと、その本質を理解するにはまだ時間が必要なのかもしれない。