アステラス製薬と北海道大学発バイオベンチャーのイーベックは5日、完全ヒト抗体に関するライセンス契約を締結したと発表した。イーベックが完全ヒト抗体を国内製薬企業に導出するのは初めて。
今回の契約により、アステラスは、前臨床段階の感染症治療用完全ヒト抗体の一つについて、全世界での独占的開発・製造・商業化権を取得する。また、イーベックに対し、契約一時金6億円を含め、感染症治療用完全ヒト抗体の開発マイルストン、上市後の売上マイルストンとして、最大で総額130億円の一時金を支払うことになった。さらに上市後は、売上高に応じたロイヤリティを支払う。
イーベックは、2003年1月に、北海道大学遺伝病制御研究所の高田賢蔵教授が進めてきたEBウイルス研究の成果をもとに、札幌市に設立された大学発バイオベンチャー。EBウイルスの変換方法を用いることで、癌や感染症、炎症性疾患など、幅広い領域で純国産のヒトモノクローナル抗体の開発を進めている。
08年には、独ベーリンガーインゲルハイムに治療用完全ヒト抗体の独占的開発・商業化権を初めて導出し、契約一時金と開発マイルストーンを合わせ、総額5500万ユーロ(約88億円)の大型契約の締結に成功している。その後、昨年には、アステラスと完全ヒト抗体の独占的評価契約を締結していたが、今回、アステラスと正式にライセンス契約を締結。一時金総額は最大で130億円と独ベーリンガーを上回る大型契約となった。イーベックの抗体技術に対し、アステラスが高い評価を与えた格好だ。
一方、アステラスは、「移植・免疫疾患、感染症」領域を重点研究領域の一つに掲げており、バイオベンチャーとのオープンイノベーションによって、完全ヒト抗体の一つを導入することで、感染症領域の開発パイプラインを拡充させたい考えだ。