厚生労働省は、不活化ポリオワクチン(IPV)の国内導入が早くても2012年度の終わりごろになるとして、IPVを待って現行の経口生ポリオワクチン(OPV)の接種を見合わせることのないよう呼びかけている。接種控えによって免疫獲得の機会を逃し、国内でポリオが流行する可能性があるためだ。
日本のポリオは1960年に患者が5000人を超えたが、OPVによって沈静化し、80年の1例を最後にワクチン以外による新たな患者は出ていない。2000年には根絶の宣言も行った。しかし、海外ではパキスタン、アフガニスタンなどの南西アジア、ナイジェリアなどのアフリカ諸国で今も蔓延し、国内にウイルスが入ってくる懸念がある。一度は根絶した中国やタジキスタンで最近になって流行したことも報告されている。
現在、不活化ポリオ・ジフテリア・百日せき・破傷風の4種混合ワクチンと、単独のIPVの開発が進められている。今年末ごろから薬事承認申請が順次行われる見通しで、厚労省は迅速に審査する予定だが、導入には一定期間かかる。仮に今秋に生後6カ月の乳児が12年度末まで接種しないでいると、2歳になるまで免疫のない状態が続くことになる。
一方、OPVはウイルスの病原性を弱めたワクチンで、ポリオの罹患に似た麻痺を生じることがあるが、100万人に1.4人程度と稀で、厚労省は「IPVの導入までワクチの接種を待つことはお勧めできない」「ワクチンを接種することがポリオを予防する唯一の方法」としている。
また、OPVの場合、接種者の便中のウイルスなどから周囲の人が感染する可能性があるため、「2次感染を防ぐには、地域内で全ての乳児が一斉に接種を受けるのが、最も安全性の高い方法」として、市町村が案内する時期に接種を受けるよう注意喚起している。