医療用医薬品製造販売業公正取引協議会の接待関連行為に対する新運営基準が、来年4月から実施される。新基準は、医師の接待基準を厳格化するもので、▽商談等に伴う飲食は1人5000円まで▽製品説明会に伴う茶菓・弁当は1人3000円まで▽自社医薬品講演会に伴う立食パーティでの飲食は1人2万円まで▽2次会やゴルフ、カラオケ、観劇、釣りなど娯楽の提供禁止――などが柱。
さらに2013年度からは、製薬協の「透明性ガイドライン」に基づき、医師の講演料、指導料、監修料、原稿料、学術研究助成費の総額などが全て公開される予定だ。これらの制度変更で、各社の営業活動が変更されるのは間違いない。
一般社会が、これまでの製薬企業の医師への接待を「華美過ぎる」と感じていたとしても致し方ない。新運用基準の「立食パーティの飲食費1人2万円まで」でさえ、「まだまだ高い」と疑問符を付ける人も少なくないだろう。
改めて言うまでもないが、製薬企業が医療消費者に「接待の有無が医師が選択する薬剤に影響を及ぼしている」と不信感を抱かせるような行為は絶対に避けなければならない。その意味でも、今回の公取協の運用基準の見直しは評価されるべきだ。
では、製薬企業側の受け止め方はどうか。各企業とも概ね接待関連行為の運用基準見直しを「良し」としているようだ。外資系企業は、本国に接待の習慣がないことから、その大多数が以前から社内基準で娯楽提供を禁じてきた。
国内企業も、第一三共のように厳しい社内基準を作り、早くから対応してきたところもあるが、ほとんどの企業が新基準を前向きに捉え、自社基準改定に取り組んでいる。
一方、医師側も最近はMRに対して、「医薬品の安全性・有効性や、その周辺に関する情報提供」のみを望む声が圧倒的多数を占めると聞く。地方に行くほど人間関係が重視され、趣味娯楽のウエートが高くなるという分析があるが、接待基準の厳格化によって困難を来たす医師はほとんどいないのが現状だ。
とはいえ、せっかく新しい接待の運用基準を定めても、これまでの営業活動の慣習から脱し切れずに、抜け道を考え出す企業の存在も懸念される。その一例として、門前の調剤薬局に医師を接待させて、その費用を調剤薬局にバックするなどの方法が指摘されているが、このような抜け道が横行することは言語道断といわざるを得ない。
新運用基準を遵守し、それぞれの製薬企業が同じ土俵に立てば、プロダクト本来の特徴が処方決定の決め手となるだろう。各社MRには、本来のディテーリング活動を営業成果に結び付ける真剣勝負を期待したい。