日本、中国、韓国の薬事規制当局は10月31日、都内で局長級会合を開き、中国主導で東アジア地域共同臨床試験のガイドラインを取りまとめていく方針を確認した。日本が調整役となって実施している医薬品応答性の民族的要因に関する研究や、韓国が行っている各国の規制比較などを踏まえ、起草のためのワーキンググループを設けて来年から作業を進める方向だ。
日中韓3国は、2007年の保健大臣共同声明に基づいて、臨床試験データの相互利用を目指した検討を進めている。今回、2日まで都内で開催された「APEC多地域共同臨床試験ワークショップ」で各国当局がその成果を報告した。
厚生労働省の安田尚之企画官(医薬国際担当)によると、日本が中心となって進めている民族差検証の成果を踏まえ、臨床試験のプロトコールを厳密に設定する必要性を確認したという。
具体的には、[1]薬物動態を評価する際には外的要因をコントロールした単一プロトコールを統一的に適用する[2]遺伝子多型の発現割合が民族間で大きく異なる可能性があるため、被験者の遺伝子型を明らかにした上でデータを評価する――の二つがポイントになる。
厚労省の研究班は、過去の文献等で民族差が示唆されていたモキシフロキサシン、シンバスタチン、メロキシカムを対象に、日本人・中国人・韓国人・北米在住白人の健常成人男性における単回投与後の薬物血中濃度を、同一プロトコールで調べた。その結果、モキシフロキサシンで白人にグルクロン酸抱合体の血中濃度が高い傾向が見られたものの、UGT1A1遺伝子多型の発現頻度で説明がつき、他の2剤に薬物動態の民族差は見られなかった。
一方、ワークショップで中国国家食品薬品監督管理局の担当者は、データの質や信頼性を相互に確保するために、多地域共同臨床試験のガイドラインの策定を目指し、当面はコンセプトペーパーの作成に取り組む意向を示した。
韓国食品医薬品安全庁は、日中韓の薬事規制の比較を年末までに完成させ、ガイドラインに反映させたい考えを説明した。