流通関係団体と消費者団体、食品・化粧品・日用品・医薬品メーカーなどが連携し、消費者の視点に立った政策等を提言していこうとする新たな経済団体が2日に発足した。名称は「国民生活産業・消費者団体連合会」で、会長には戦後の小売業界の発展を牽引してきた一人で、日本チェーンストア協会会長も務める清水信次氏(ライフコーポレーション会長)が就任した。
3月に発生した東日本大震災、そして原子力発電所事故による放射能汚染と経済不振が重なり、生産の落ち込み、所得の減少、さらにはこれらを遠因とする消費の減退から企業業績の悪化は避けられず、地球規模の資源、食糧の争奪、エネルギーコストの上昇など、企業や国民の負担が増大することで、国民生活の安全と安心が脅かされるとの懸念もある。
大震災から約9カ月を経過した今日にあっても、政府の原子力政策に関する論議も不明のままで、さらに関東・東海・南海等の大地震に対する備えも不十分なままで、国民の不安を解消し、安全を確保することはできるのか――ということから、流通関連業界の大結集が画策された。
同連合会では「現在の日本の実情は、われわれが明治、大正、昭和、平成に至る今日までの143年間の長きにわたり、御国任せ、御上頼りにしてきたことも一因ではあるが、残念ながら1億2600万人の生活、生命を守るための組織団体が存在していないことにも起因している」として、「生産、製造、流通サービスの業界と消費者団体が一体となって大いに研究・議論を尽くし、切磋琢磨して国民生活の安全、安定の確保と質の向上、関連業界の健全な発展に寄与したい」と、設立に当たっての声明を発した。
声明文では、現在の日本の置かれている立場を詳述しているが、その中で「なるほど」と思える部分を抜粋すると、『今を去る88年前(大正12年9月1日)、首都東京は関東大震災に見舞われ、死者・行方不明者約14万人、被害総額200兆円を超える大打撃を受けて壊滅した。当時の国力は現在に比べ、はるかに微弱なものであったが、震災後、直ちに復興院を立ち上げ、その復興院総裁の決断と手腕により、次々と難問を解決し、わずか6年余の短期間で見事に復興を果たした。さらに、復興のための増税など一切なく、大正末期から昭和初年にかけて東京、横浜といった大都市を立派な近代都市に再建させた。……』というもの。
日本を代表する流通・小売企業、メーカー、団体が結集しただけに、2日の設立記念パーティーは麻生太郎元内閣総理大臣、鹿野道彦農林水産大臣ら多数の国会議員も駆けつけ、盛大に行われた。あいさつで清水会長が力説したように、まさに「今後の国家100年の大計を政官民一体となって大いに議論すべき時」と言えよう。新団体の早急な動き出しが期待される。