今年も残すところあと数日となった。3月11日に発生した東日本大震災の影響はあまりにも大きく、厳しい一年の終わりを迎えようとしている。大地震と津波、さらに原発事故と、未曾有の被害をもたらした。震災の大きな爪跡が、わが国の経済に長きに渡って及ぼす影響を懸念する人は少なくないだろう。
海外でも、ニュージーランド地震やタイの大洪水、ユーロ圏の経済危機などネガティブな話題が続出し、暗い世相を醸し出した。
このような中、大震災での支援活動で、薬剤師が被災者やその他医療従事者から高い評価を受けた。
お薬手帳が、慢性疾患患者への継続的な薬物投与に大きく寄与した多くの事例も見逃せない。非常時にも薬剤師職能が不可欠となることを一般市民に訴求できたのは、薬剤師職能を確立していく上で大きな有効ポイントになった。
来年は、6年制の薬剤師が初めて登場する記念すべき年でもある。今年を表す漢字として「絆」が選ばれたが、薬剤師には、ぜひ、患者や他の医療従事者との“絆”を大切にして、未来を担う薬剤師が誇りを持って活躍できる基盤作りに尽力してもらいたい。
一方、薬業界は、グローバル化の加速、アジア市場の拡大、ジェネリック薬市場の拡大など、事業を取り巻く環境が大きく変革している。
科学技術の進展、疾病メカニズムの深化・高度化、開発コストの高騰がますます進む中、イノベーティブで高薬価な医薬品と、コモディティで低薬価な医薬品への2極化がより鮮明になってきた。
これに伴い、世界の製薬企業では、グローバルメガファーマ、スペシャリティファーマ、メガジェネリックファーマへの収れんが加速しており、日本の製薬企業も大きな岐路に立たされている。
限られた時間・資金・人材をいかに有効に活用するかが、今後の各社の生き残りの重要なポイントになる。
このような現況の中、来年4月から医療用医薬品製造販売業公正取引協議会の接待行為に対する新運営基準が実施される。
新基準は、医師の接待基準を厳格化するものだ。さらに、2013年度からは、製薬協の「透明性ガイドライン」に基づき、医師の講演料、指導料、学術研究助成費の総額などが全て公開される予定だ。
これらの施策により、プロダクト本来の特徴が処方の決め手となるのは言うまでもない。各社MRには、本来のディテーリング活動を営業成果に結びつける真剣勝負が求められるようになる。
来年は、国内製薬企業にも、伝統的な日本的経営である「絆」を大切にしながら国内外で飛躍する姿を期待したい。