大日本住友製薬は2月29日、癌領域を専門とする米国バイオベンチャー・ボストンバイオメディカル(BBI)の買収に合意したと発表した。BBIは、癌幹細胞に作用する低分子経口剤のBBI608(PIII準備中)やBBI503(PI)などの有力なパイプラインを持つ。2015年に北米上市を目標とするBBI608について多田正世社長は、「既存の抗癌剤とは異なる癌幹細胞に作用するメカニズムを有するため、癌の根治薬としての期待が大きい」「両剤ともにブロックバスターになる可能性が高く、ポストラツーダとして考えている」と述べた。
買収に当たって大日本住友は、BBIに株式買収の対価として2億ドルを支払うと共に、将来、両剤の開発マイルストンとして最大5億4000万ドル支払う。販売後には、売上高に応じた販売マイルストンとして、年間売上高が40億ドルに達した場合には、合計で最大18億9000万ドル支払う。
多田氏は「癌はCNSに次ぐ当社の重点領域」とした上で、BBI買収メリットとして、「癌領域の革新的な開発パイプラインの獲得」と「継続的に抗癌剤が創出できる優れた創薬プラットフォームと開発力の獲得」を挙げた。
抗癌剤の開発パイプラインでは、BBI608とBBI503の日本、北米での独占的権利を獲得した。
現在、北米でBBI608が大腸癌のPIII試験準備中、各種固形癌ではPIb/II試験段階、BBI503は進行性の固形癌に対してPI試験段階にある。
一方、大日本住友の国内での癌領域の取り組みとして、京都大学とのDSKプロジェクトや、中外とWTIペプチドを用いた治療用癌ワクチンWT4869共同開発などを進めている。多田氏は「成果が出るまでに、もう少し時間がかかる」と説明。
今回の抗癌剤の創薬プラットフォーム獲得について、「BBIの癌研究に関する人材やノウハウを非常に高く評価している」と強調し、「現在、従業員は30人だが、研究者の増員を図りたい」とすると共に、「日本の研究所の人材を米国に派遣する」考えも明かした。
また、米国での抗癌剤の販売戦略については、「典型的なスペシャリティ領域で、多くのMRを必要としない」と明言。「販売体制の構築は、13年後半からスタートする」計画を示した。