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スイッチOTC薬、拡大の鍵は薬剤師の姿勢

2012年07月27日 (金)

 先月15日の社説「新販売制度、本質見極めた対応を」に対し、ある薬剤師の方からご意見を文書で頂戴した。現在、ドラッグストアで勤務しOTC薬販売に従事する現場からの視点で、スイッチOTC薬と薬剤師、改正薬事法について俯瞰。全文にわたり薬剤師のOTC薬販売復権への熱い思いが込められていた。とくに、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の一般用医薬品部会で、スイッチOTC化に向けた議論が行われている高脂血症治療薬「エパデール」の承認へ大きな期待を寄せていた。

 その一般用医薬品部会が来月下旬にも開催される予定で、再度「エパデール」の議論が俎上に上るようだ。先月末に公開された2月の部会の議事録を読むと、承認反対の姿勢を貫く日本医師会側委員からの意見は、薬剤師の対面販売による情報提供で、医薬品そのものの有効性、安全性の確保ということをほぼ考慮していないように感じられた。医師を介しない生活習慣病薬は認めないというスタンスにも受け取れる。果たして来月の議論でも同じ平行線を辿るのだろうか。

 ポイントは日医側委員の意見で出た「最初に薬ということはあり得ません」という指摘だ。『最初に薬』とは、薬局等で市販されることが、症状のいかんに関わらず、イコール患者が主体的に購入できるという意味なのだろうか。医師は診断し、患者に薬を処方する。もちろん薬剤師は診断できない。そうした診断行為を介さずに生活習慣病薬が購入できる環境が整うことに対して「医師の良心」から反対するという論法のように感じる。

 そもそもスイッチOTC化推進の背景にあるのは、セルフメディケーションの推進もさることながら逼迫する医療費財政の削減がある。厚労省側にも、医療用成分のスイッチOTC化を図ることで、単純に薬剤費の抑制につなげたい考えがあるのは周知の事実。2009年6月施行の改正薬事法による新医薬品販売制度も、こうした取り組みが進めやすい環境を法的に整備したものだ。

 前述の薬剤師も医薬品販売の現場で常に感じることとして「セルフ購入者が多く、セルフ販売の普及でOTC薬が雑品との狭間で埋没している。医薬品の安全性よりも利便性を優先させた姿」と現状に憂いを示す。さらに、店頭の薬剤師や登録販売者もOTC薬の品出し、棚割り、価格・利益チェック、返品処理などの雑務に追われ、改正薬事法の趣旨目的の理解不足の感も否めないという感触のようだ。

 現場の全ての薬剤師がそうであるとは思わないが、多かれ少なかれこうした状況はOTC薬を購入する際に常に感じることではある。法的に整備されたOTC薬販売に関し、少なくとも販売に携わる薬剤師が、日々の日常業務の中で、改正法の趣旨を理解した取り組みを地道に進めていくことで道は拓けるものと期待したい。



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