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副作用情報生かす仕組みを

2007年04月16日 (月)

 抗インフルエンザ薬「タミフル」服用後の異常行動に関し、4日の薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会は、「現時点ではタミフル服用と転落・飛び降り、またはこれらにつながるような異常行動や突然死などの副作用との関係について、結論は得られない」とし、当面は現在講じている措置を継続することが妥当との見解を取りまとめた。

 また、同調査会の下に二つのワーキンググループ(WG)を設置し、副作用についての詳細な検討等を進めていくことも同時に決めた。今後は、WGでの検討が一つの焦点となるが、一方で今回の騒動を振り返ると、せっかくの副作用報告が生かされなかったことから、収集・分析体制そのものに、新たな課題を突きつけられたと言えるだろう。

 タミフルと異常行動の因果関係に関しては、2005年度厚生労働科学研究「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」や、06年1月の薬食審医薬品等安全対策部会安全対策調査会で否定的とされたことから、厚労省は一貫してこの立場をとってきた。

 しかし、異常行動を無視してきたわけではない。厚労省自身も積極的に注意喚起に取り組んできたことは事実だ。

 04年5月には添付文書の「重大な副作用」として、「精神・神経症状(意識障害、異常行動、譫妄、幻覚、妄想、痙攣等)」を追記したほか、今年2月になって、タミフルを服用したとみられる中学生が自宅で療養中、自宅マンションから転落死するという事例が2例報告されたことを受け、2月28日にはインフルエンザ治療に携わる医療関係者に対し、「2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮する」などを患者・家族に説明するよう喚起した。

 その後、3月20日にも、2月上旬に12歳の患者がタミフル服用後、2階から転落して骨折した症例が報告されるなどしたため、同日、製造販売業者である中外製薬に対し、緊急安全性情報(ドクターレター)の作成と、10歳以上の未成年には原則としてタミフルの使用を差し控える添付文書改訂等を指示している。

 ただ厚労省自身、こうした注意喚起を図りつつも、副作用情報の収集に関しては死亡例に重点を置いており、タミフル服用と異常行動との関係について詳細な分析は行っておらず、これが世間から批判を浴びることになった。

 4日の安全対策調査会で、厚労省の副作用報告を受けた委員や参考人からは、▽どこまでを異常行動と捉えるのか▽異常行動には睡眠障害に伴う症状が多く含まれているが、それとの関連に着目した分析がない▽時間的経過がはっきりしない報告も多い――といった意見や、インフルエンザそのものによる異常行動、他のファクターによる突然死の可能性も示唆されるとし、今回示されたデータでは判断が下せないとする考えが多数を占めた。

 つまり、医療や薬学の専門家としては、収集されていた情報だけでは、科学的な判断が示せないことを暗に指摘したともいえる。副作用情報は集めて、蓄積するだけでなく、それを分析・評価し医療関係者へフィードバックし、最終的に国民や患者の安全性確保につなげなければ何の意味のもない。

 タミフルをめぐる一連の動きは、まさにこうした課題を露呈した。料理の世界では“素材を生かすも殺すも料理人次第”と言われるが、副作用情報もこれと全く同じだ。収集から評価、伝達まで、一連の仕組みをもう一度見直す必要があるだろう。




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