食塩摂取量と血圧は密接に関係し、食塩の過剰摂取が高血圧をもたらすことは広く知られている。また、世界の様々な民族を対象とした疫学調査でも、食塩摂取量と高血圧発症頻度は相関関係にある。
最近の知見では、食塩に対する血圧の反応性は人種・個人によって異なり、日本人は遺伝子的に食塩感受性が高く、高血圧になりやすい体質にあるとの報告がある。さらに、癌よりも高血圧の方が遺伝子による影響が強いことも分かっている。
さらに、環境因子による血圧の食塩感受性の影響も無視できない。特に、肥満やメタボリックシンドロームでは、食塩感受性高血圧を呈しやすくなる。
一方、日本の「高血圧治療ガイドライン」では、6g/日未満を推奨食塩摂取量としているが、遵守されていないのが現状だ。
近年、日本人の食塩摂取量は減少傾向にあり、7年間で1g/日減少しているが、最近の調査では平均10g/日以上とまだ多い。また従来から、日本人の食塩摂取量は東北地方で多く、西南地方は少ない。最も多いのが山梨県(男性13・3g/日、女性11・2g/日)、少ないのが沖縄県(9・5g/日、8・1g/日)だ。最も少ない沖縄県でも、6g/日未満には至らない。
食塩を1g/日減らすと、24時間を通して1~0・5mmHg程度血圧が下がるが、日本人の高食塩生活において減塩が必要なのは大人も子どもも同じ。さらに、以前は家庭内で減塩すれば事足りたが、現在はそれだけでは不十分だという。外食や、日常受動的に口にする加工食品、コンビニ弁当等に塩分が多く含まれているからだ。
では、どのようにして理想的な減塩環境を作ればいいか。そのヒントの一つに「こだわりのヘルシーグルメダイエットレストランin呉&広島」プロジェクトがある。
同プロジェクトは、医師やコメディカル、料理人、タウン雑誌の協力によって、町の飲食店で1食分が、塩分2~3g、400~600kcalのランチなどを、1店につき1メニュー提供するというもの。
新メニューはタウン情報誌で紹介し、患者や市民がプロの作ったおいしい減塩カロリー食を食べることで外食での減塩を実現する。さらに、同メニューから味、量、食材を学習し、それを家庭食にも応用して家庭内での減塩を図るという狙いもある。
参加店は、2008年に呉市の8店から、今では広島市、三原市などにも広がり、フランス料理からお好み焼き、ラーメン店まで約60店に増加している。
このように、外食産業、加工食品産業の協力を得ての減塩しやすい社会環境作りは必要不可欠になるだろう。今後、学校の食育を含めて、学校薬剤師や街の薬局も参加した地域ぐるみでの減塩への取り組みが、全国に拡大していくことを期待したい。