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実務実習の格差是正が課題に

2012年11月30日 (金)

 薬学教育6年制の目玉ともいえる病院や薬局での計5カ月間に及ぶ長期実務実習が2010年からスタートし、今年で3年目に突入した。実務実習の指導薬剤師と薬学生との散発的なトラブル事例は各地で耳にするものの、全体的に見ればこれまで順調に推移しているようだ。薬系大学側、受入施設側の関係者の尽力によるもので、改めて敬意を表したい。

 とはいえ、より良い実務実習体制を構築していく上で、様々な課題も浮上している。最も大きな課題は、施設によって実務実習の内容に格差があることだ。

 ある病院では、薬学生にはなるべく病棟に上がってもらい、そこでの薬剤師の業務を経験させている。ある薬局では在宅医療の現場に薬学生を積極的に連れて行き、一般用医薬品の販売にもテーマを決めて関わらせている。こうした施設が存在する一方、計数調剤や計量調剤を中心とした実務実習を行っている施設もあると聞く。

 これまでは基盤整備のために実務実習の受入施設をいかに増やすかが焦点になっていた。特に4年制教育の時には薬局で実務実習が行われることは少なく、薬学教育6年制が始まって以降、実務実習を受け入れる薬局を増やすべく力が尽くされた。

 こうした経緯を背景に、大学側も実務実習の内容について施設側に注文をつけづらいのが現状だ。しかし、受入施設数はある程度揃ってきた。今後より良い体制を形作っていくためには、実習内容の格差解消と内容の向上を進めるべきだろう。

 病院、薬局での実務実習の経験は、薬学生に大きな影響を与える。医師や看護師から信頼され、生き生きと働く指導薬剤師を見て「自分もあのようになりたい」と思う薬学生は少なくないようだ。

 一方、それとは逆の姿を目にすれば「薬局で働きたくない」「病院で働きたくない」というネガティブな感情が引き起こされかねない。薬学生は基本的に実務実習を受ける施設を選べない。どの施設で実習を受けるかによって、将来の進路が大きく左右されてしまうことを危惧する。

 病院、薬局ともに求人が求職者を上回る薬剤師不足が続いている。充実した実務実習を行うことが回り回って、薬剤師確保につながる可能性がある。薬学生は実務実習施設の情報を共有し、どこに就職すべきか、就職すべきでないかを判断しているようだ。

 あるべき姿として、希望する薬学生には必ず、複数施設での実務実習を行えるようにしてはどうだろうか。

 また、ある病院薬剤師から聞いたアイデアだが、院外処方箋を発行する病院と、それを応需する薬局でそれぞれ実務実習を行うことによって、入院から外来、在宅医療への流れを薬学生に体感してもらうのはどうか。

 実務実習は軌道に乗った。今後はその内容やあり方について改善が必要だ。



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