日本薬剤師会会長 児玉 孝
2012年は、前年発生した東日本大震災被災地の復興途上での年明けとなった。2月には「社会保障と税の一体改革大綱」が閣議決定され、8月に成立した「社会保障制度改革推進法」に基づく「社会保障制度改革国民会議」が創設された。
超高齢社会の到来を踏まえ、増大する年金・医療・福祉の支出を抑制しつつ、国民が安心して生活できる社会保障制度の安定的な運営に向けた議論が本格化し、これまで半世紀にわたって、国民の健康面での安心と安全を守ってきた社会保障制度・皆保険制度は大きな転換期を迎えている。
医療保険については、4月に社会保険診療報酬等の改定が行われたが、震災復興という財源が不足する中、技術料は1・379%のプラス改定、薬価等が1・375%のマイナス改定で、実質では0・004%のプラス改定となった。
薬局・薬剤師を取り巻く環境が大きく変化する中において、今後の超高齢社会に向けた薬剤師への期待を含んでもらえたものと理解している一方で、改定の議論の過程において、医薬分業のあり方などに対して受けた指摘に対しては、これを真摯に受け止めると共に、国民の期待に応えられるよう努力していくことが、私たちの最大の課題であると考える。
また、本年は、6年制薬学教育を受けた初めての薬剤師が社会に巣立った。昨年末の人事院規則の改正により、薬剤師国家公務員の初任給等が、待遇面でも教育年限を考慮した体系とされたことは、新たな薬剤師への期待の大きさの表れと認識し、薬剤師職能の将来を担う彼らに大いに期待すると共に、より一層実力を発揮できるような業務環境の整備を図る施策を講じていきたいと考える。