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【2012年 回顧と展望】前進する流通改革第三ラウンド‐薬卸連

2012年12月26日 (水)

日本医薬品卸業連合会専務理事 羽入 直方

 年末に政治ドラマが待っていた。党首討論から総選挙へ雪崩れ込み、政権の再交代となった。政界再編の入口だという声が高い。

 今年は、社会保障制度にとって画期的な年であった。民主党マニフェストになかった消費税率の引き上げ法案が成立し、持続可能な制度運営に不可欠の財源対策の道筋がつけられたからである。負担増を歓迎できないのは人情だが、社会の行く末に思いを致すべきだろう。

 医薬品卸業界にも画期的な年だった。「前進する流通改革第三ラウンド」となったからである。流通改善懇談会(流改懇)の始動から8年、緊急提言から5年が経過し、流通改革の取り組みの充実が図られている。

 契機は3月の流改懇であった。日本保険薬局協会(NPhA)と日本医薬品卸業連合会(薬卸連)が、昨秋以来、非公式に重ねてきた協議結果について、流改懇メンバーの賛同が得られた。単品単価取引を推進するためのカテゴリー別交渉の実施、取引条件の事前明示と有効期間を定めた覚書の締結等である。

 カテゴリー別交渉は、カテゴリーごとの相場観のすり合わせを通じて単品単価設定への手がかりが生まれる。取引条件の事前明示は、配送コスト、債権リスク等の価格決定要素の吟味を通じ、合理的価格形成に接近する。有効期間を定めた覚書の締結により当該期間内の取引価格、支払いサイト等の確認と共に、有効期間経過後の遡及値引きはないことが取引当事者の合意となる。薬価調査を跨いで価格が変更され、調査結果の信頼性を損ねる事態の発生防止効果が期待できる。

 NPhAと薬卸連は、流改懇に新設されたワーキングチームや9月から10月にかけてのブロックごとの意見交換会を精力的に行い、問題意識の共有化を図り、傘下の薬局・卸の価格交渉の進展を促した。9月末の妥結率は、前回薬価改定年並みではあったが、妥結事例の9割超が単品単価取引と有効期間付き覚書の締結をクリアした。

 川下取引において、ユーザーが経営安定のためとして総価による一律値引きで確実な薬価差益の獲得を目論むことは、製品ごとの価値に見合った市場価格の形成を不可能にする。購入製品の構成が違うにもかかわらず値引率(薬価差率)が常に同一となることは本来ありえない。

 経営の収支バランスに問題があるのならば、(経営の効率化を図った上で)診療・調剤報酬体系の改善を主張するのが正道である。経営財源や多店舗展開資金等を薬価差益に求めるのは筋違いだ。自立した経済主体同士の自由な市場経済の原点に立ち返り、価格交渉当事者の双方に長期未妥結や価値を反映しない市場価格は認められないというルール形成の努力が求められている。

 川上取引では、川下取引で価値に見合った市場価格が形成されるよう市場動向を踏まえた仕切価の設定が望まれる。これはメーカー・卸の流改懇ワーキングチームのテーマだが、医薬品価値の尊重を求める新薬創出加算制度の恒久化の前提条件だろう。新薬創出加算制度恒久化と流通改革は表裏一体の関係にある。

 不適合品の迅速・円滑な回収など安全・安心・信頼の医薬品流通を確保する上で、販売包装単位に製品名・製造番号・有効期間の3点セットのバーコード表示が重要である。


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