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重要な患者と医療側の相互理解

2007年5月14日 (月)

 先月、大阪で開かれた第27回日本医学会総会で、日本の医療事情に関するアンケート調査の結果が報告された。全国の医師、コメディカル、一般市民(大半は健常者で患者は僅か)など、総勢2万7042人を対象とした大規模な調査である。

 その結果を見ると、日本の医療のレベルについては、医師、コメディカル、一般市民とも、80%以上が「高い」という認識を示している。だが、日本の医療に対する満足度は、「やや不満」の回答が医師は40%なのに対し、コメディカルは54%、一般市民は52%と高く、不満に思っている人が多いことが分かった。

 さらに、「治療の選択に患者の意見や希望が生かされていると思うか」という設問には、医師の70%は「まずまず生かされている」と答えたが、コメディカルの46%、一般市民の55%は「生かされていない」と厳しい見方を示している。このように医師と一般市民では、医療に対する認識に大きな乖離が見られる。

 アンケート調査の結果を端的に表現すれば、「医師の常識は一般市民の常識ではない」となるだろう。これらの短い設問からも、医師と一般人のコンセプトの違いが浮き彫りにされている。

 加えて興味深いのは、日本の医療に対する満足度と治療の選択に患者の意見を取り入れることについて、コメディカルが一般市民と同じ思いを抱いていることだ。コメディカルが、「このままで良いのか」と自問自答しながら、日々の仕事を続けている姿が目に浮かぶ。

 医療従事者、とりわけ医師は、自分が正しいと考えたことを患者に押し付けるような医療から、患者の意思や意見を十分に尊重し、協同で作り上げる医療へ転換させることを心がけなければならない。近年、医療にセカンドオピニオンが取り入れられる傾向にあるが、その流れはますます強まるだろう。

 とはいえ、医師が限られた短い診療時間の中で、患者の思いを全て察知しながら治療を行うことは、物理的にも無理がある。では、1人の患者に費やす診療時間を長くするには、どのような方策が考えられるのか。

 一つには、患者数を減らせばよいという単純明快な回答が思いつく。現在の医療保険制度は、主に疾病の治療を対象としているが、もっと予防医学に目を向ける必要があるだろう。国民が健康維持、疾患の予防に強い関心を持つことは極めて自然である。糖尿病、高血圧、高脂血症などの疾患に対する薬物治療は、心筋梗塞や脳卒中などの発症を防ぐ意味合いが強く、現行医療保険制度の中で予防を重視していくことは不可能な話ではない。

 また、職場検診、地域診療、人間ドックなどが、それぞれの法律に基づき個別に実施されているが、国や地方自治体も加わって、これらを整理・統合することも重要である。

 その一方で一般市民も、「医療は完全無欠」という認識を改める必要がある。まず、「病気になるのは自分に原因があるから」という考え方を持たねばならない。疾患にかかるのも治らないのも、全て医療従事者の責任だというのは本末転倒である。薬の効果ばかりを期待して、副作用を理解しようとしないのも日本人特有の現象だ。

 何よりも患者と医療関係者が、互いの立場を理解し合う環境をつくっていくことが求められよう。




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