厚生労働省は、後発品の使用促進に向け、2018年3月末までに後発品の数量シェアを60%以上に引き上げる新たな目標を打ち出した。
新たな目標値は、普及が進むフランスやスペインの使用率を参考にし、長期収載品と後発品を分母に設定している。これまでは、医薬品全体の数量に占める後発品の割合を指標に用いており、前回薬価調査の11年9月時点の後発品数量シェアは旧指標で22・8%、新指標では40%に相当する。新指標での60%は旧指標で34・3%となり、新目標では5年間で約1・5倍増を目指すことになる。後発品の置き換えが進んでいることを考えると高い目標(厚労省)だという。
目標達成に向け、使用促進策の取り組み状況を把握する「モニタリング」を強化するほか、15年度中に品切れゼロとする目標も掲げた。保険薬局には、薬剤服用歴管理指導料を算定するに当たり、患者への情報提供を欠くことのないよう周知徹底すると共に、医師や薬剤師の後発品への理解が進むようなインセンティブも検討するとした。
しかし、新ロードマップの策定を報告した中央社会保険医療協議会では、このインセンティブに非難が集中。主に診療側委員の医師から、「もう薬剤師へのインセンティブはいいのではないか」「文書説明は当然の義務。それをやって加算を取るのはとんでもない話」といった厳しい意見が出た。
後発品の使用状況に関する12年度調査の結果速報が示された2月の中医協総会では、薬剤情報提供文書を用いた患者への口頭説明割合が3割にとどまるなど、薬剤師の努力不足を露呈してしまっただけに、そうした声が上がるのも無理はない。
第1類医薬品の取り扱いを薬剤師のみに限定した09年の改正薬事法をはじめ、薬局・薬剤師には、職能を発揮するための環境整備がいくつか行われてきたように思う。
しかし、第1類の販売時に薬剤師が文書を用いて詳細な説明を行った薬局が55%にとどまることが、厚労省の覆面調査で明らかになるなど、世間の期待に応えているとは言い難い状況だ。
医薬分業に対する厳しい評価は、こうしたところからきているのではないか。
「何か事を成すには、まず、環境を整えてから」というこれまでのスタイルは、他職種から見ても「恵まれている」と映るようだ。
とはいえ、12年度診療報酬改定では、重点課題に在宅医療の推進が位置づけられ、在宅患者調剤加算が新設された。また、厚労省の13年度予算案には、薬局を活用した薬物療法提供体制の整備に4000万円が計上されている。
いずれもキーワードは“在宅”で、この課題に着実に取り組み、実績を残すことが必要だ。そうしなければ、医薬分業に対する評価は年末の診療報酬改定に向けて厳しさを増すばかりだ。