医療用医薬品の流通問題が提起されてから、ずい分と長い時間が経過した。もちろんOTC医薬品流通にも問題はあるが、医療用は公的保険制度下における商行為という点で、国民の関心はひときわ高くなるのは当然であろう。
現在、各卸が同じ方向で独自に医薬品の流通改善に取り組んでいるが、これは第3ラウンドと位置づけられている。では、それまではどのような道を辿ってきたのか。なぜ、改善がうまくいかなかったのか。
本紙前号で、「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」(流改懇)委員、中央社会保険医療協議会薬価専門部会の専門委員を務めてきた日本医薬品卸売業連合会副会長の松谷高顕氏(東邦ホールディングス会長)と、長く医薬品卸業界、卸企業を客観的に見続け、時に厳しい意見も述べてきたクレコンリサーチ&コンサルティングの木村文治社長に、流通改善の経緯と認識、課題について忌憚ない意見を交わしてもらった対談を掲載した。
流通問題を話し合う場として、流改懇以前には医薬品流通近代化協議会(流近協)が設置されていたが、さらにその前には流通対策研究会なるものが存在していたと木村氏は振り返る。1975年頃だというので、ゆうに30年は経っているだろう。
流通に関心が持たれ始めた発端は、当時騒がれていた薬価制度と薬価調査、薬価差の問題とされ、国内のみならず、日米構造会議などでも様々な視点から大いに議論された。
その後、流近協メッセージやアピール、東北地区卸への公取委調査と勧告、Rゾーン15~2%、調整幅2%などの動きを経て、04年に流改懇が設置された。流改懇では発足年内に中間取りまとめが発表され、07年に緊急提言が発せられた。そこから流通改善第1ラウンドがスタートし、第2ラウンド、第3ラウンドへとつながってきた。
両氏の対談では、松谷氏が、「第3ラウンドで一番顕著なことは、流通当事者間の基本的認識がほぼ固まったことであり、大変大きな進歩だと思う」と述べ、これまでとは違った潮流ができてきたとの認識を示した。
また、▽流通改善の一番のポイントは単品単価契約▽(大きな変化には)エビデンスを示して説明することが必要▽流通のレギュラトリーサイエンスの構築を▽メーカーとの交渉ではカテゴリー別販売構成、納入価、仕切価、割戻しなどの数値を基本にする共通認識が必要▽流通経費のあり方について考えていく必要も――など示唆に富んだ指摘、提言が述べられている。
これまでの失敗を教訓として、やっと誰もが認める流通改善が図られようとしている。業界発展のためには、公正な取引、商行為の透明性が何よりも求められており、課題も多いが、今度こそ実現への確実な第一歩が踏み出されることを期待したい。