「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」の議論が続いている。今月はきょう24日と31日が予定されているが、安倍政権の成長戦略の策定も絡んで、最終決着が近いとの見方も強く、今後の行方が大いに注目されるところだ。
この問題に関しては、厚生労働省研究班による「薬の購入に関する意識と実態調査」の結果が、非常に興味深い。今年2月に、長野県内の成人男女3500人を対象に実施した意識調査では、ネットで薬を「買いたい」とした人は3%、「場合によっては買いたい」が17%であった。これに対し「買いたいとは思わない」が52%、「あまり買いたくない」が19%と、ネットで薬を購入することに否定的、あるいは消極的な人が7割を超えた。高齢層で否定的なのは分かるが、村部(回答279人)でも購入意向は2割に届いていない。
確かに、ネットで医薬品や健康食品、化粧品などを購入した経験が「ない」人が約8割と、多くを占めていたのも事実。また、昔から医薬分業の先進的な県であり、「薬局・薬店、ドラッグストアと住民とのつながりが、他県よりも強いからだ」といった見方もあろう。それほど店頭に行くのに不便がなく、価格も目立って安くないとなれば、直接薬剤師から渡された薬を購入した方が安心と考える人が多いのは、不自然ではない。
仮に、ネット販売ルールが“緩い”形で決まると、あらゆる業種・業態、企業が参入することが予想される。これによる医薬品のチャンネル拡大は、マーケット全体を拡大させることよりも、むしろ価格下落により製品寿命が縮まり、マーケットの減少につながるとの懸念もある。
また、生活者にとっては医薬品の安全性を担保する販売の仕組みが失われる。さらには、生活習慣病の予防や未病改善に向けたスイッチOTC化にも影響を与えかねない。セルフメディケーション推進の実現も遠のくなど、デメリットは非常に大きいと思われる。
ネット販売をめぐっては、スギホールディングスの杉浦広一会長は「間違いなくネットの時代になると思う。それは脅威に感じる」とする。これは多くのドラッグストア企業も同様に感じていることだろう。
そんな中で杉浦氏は「私どもは、ネットで買うよりスギ薬局が近くにある。スギ薬局で(薬剤師に)一言聞ける。そういう部分が非常に大事ではないか」とし、今後も調剤を核にした、地域密着型のストアの出店に注力していく考えを強調する。
医薬品のネット販売を脅威に感じるのではなく、ネット社会の現実に向き合う。日本チェーンドラッグストア協会でも「ネット販売にない商品・サービスの開発、店舗強化のネット活用、ネットビジネスモデルの構築──などの対応を行っていくことが大切」としている。新たな時代、新たなカテゴリーを創造するため、これまで以上に製配販の連携強化が必要なのは確かだろう。