一般薬のインターネット販売を「原則解禁」とする“成長戦略”が閣議決定され、消費者の安全を確保するためのルール作りが今後の焦点となっている。
検討課題になったリスクの高い25品目の扱いをめぐっては、前回の検討会同様の推進派と慎重派の激しい対立が予想されるが、消費者の安全性を念頭に置いた議論の展開を強く望みたい。
そもそも、行政が積み上げてきた「薬の適正使用」の理念に反して、総額1兆円にも満たない一般薬市場を活性化することが、アベノミクスが目指す第三の矢の「成長戦略」につながるとは到底考えられない。
医療関連産業分野で、日本の将来の基幹産業育成への道筋をつけるには、アンメットメディカルニーズを満たす画期的新薬創出以外にないと断言していいだろう。
では、ライフサイエンス振興への取り組みでは、どのような戦略が考えられるのか。英国のデーヴィッド・キャメロン首相は2011年12月、「ライフサイエンス分野において英国が世界の主導的役割を果たす」ことを公約し、政府の10カ年戦略を発表した。
同戦略は、「英国独自の強みを緊密に連携させることで、患者のための医療向上はもちろん、英国への新規投資を呼び込み、競争が激しく国際化が進むこの分野において雇用とビジネスチャンスを創出できる」としている。
首相発言に伴い、英国政府は、▽法人税のさらなる引き下げ(来年4月に21%に)▽パテント・ボックス制度により英国特許から発生する利益に対する法人税を一律10%に軽減▽研究開発減税により支出額1ポンド当たり最大27ペンスの税控除▽1億8000万ポンドのバイオメディカル・カタリスト基金▽15年までに認知症研究資金の倍増――などの具体的なライフサイエンス振興施策を次々に打ち出している。
一方、わが国のイノベーション実現のための取り組みはどうか。10年度から世界唯一の「新薬創出・適応外薬解消等創出加算制度」が試行され3年余りが経過した。その間、世界同時開発プロジェクトが増加傾向にあり、一定程度のイノベーション促進効果が出ていると見ていいだろう。同制度の課題をもう一度整備した上での本格導入が望まれる。
また、R&D費税額控除も13年から費用全額の30%と改められた。加えて、内閣府の規制改革会議でも「画期的な新薬創出」に関する議論が緒に付いたばかりだと聞く。“イノベーション促進薬価”のような制度の構築が期待されるところだ。
製薬企業側も、イノベーション促進薬価等の創設を見据えて、新薬創出等加算制度や研究開発減税の具体的な貢献度を示す費用対効果を、何らかの形で開示する必要があるだろう。
政府は、医薬品、医療機器、再生医療の医療関連産業の市場規模を20年に16兆円まで拡大する方針を打ち出しているが、その実現には英国のような具体的な成長戦略が不可欠となる。