「日本再興戦略」で一般薬のネット販売が認められた。販売に際しては消費者の安全性を確保しつつ、適切なルールのもとで行うことが付け加えられ、スイッチ直後品目や劇薬指定品目などの第1類25品目については、新たな販売等の仕組みについて専門家による検討を行い秋頃までに結論を出す方向にある。
とはいえ、一定要件を整えれば、現在、約1万4000品目あると言われる一般薬の大半がインターネット上で販売、購入できることは社会的にも影響は大きい。今年1月の最高裁で一般薬ネット販売規制省令の無効判決が出て以降、大手流通業者や通販事業者のほか、家電量販店など本来医薬品販売と縁遠い業者までがネット販売を検討。閣議決定以降には販売サイトを立ち上げ第2類、第3類に限定し販売を開始する業者が相次いでいる。
ドラッグストアの業界団体である日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)では、今後決定される新ルールまでの暫定的な措置として、自主基準の「医薬品ネット販売ガイドライン」を作成。
同ガイドラインは、国民の安心と安全を守る販売・購入、安全な使用を推進すると共に、会員企業のサポートも目的とする。現在、この自主基準を全て満たす企業(店舗)サイトをJACDSホームページ上で公表するなどの動きを見せている。
こうしたネット販売が、現行法の解釈により解禁をみたことで、今後、消費者の安全をどう守るかという具体的な検討が必要になる。それに加え、どのような事象が発生してくるかの可能性も検討しておくべきだろう。
制度的な点から言えば2009年施行の改正薬事法で明記された医薬品販売時の安全性を担保する仕組みや、販売者の責任体制の喪失が懸念される。
これに伴い、薬剤師による対面販売に裏づけられた「スイッチOTC化」が期待される生活習慣病治療薬などをベースとしたセルフメディケーション推進の実現が遅れ、ひいては現行の医療保険制度維持にも影響をもたらすことになるかもしれない。
また、ネット販売により一般薬市場が活性化するかといえば、むしろ既存医薬品販売業と、新規参入業者によるネット価格競争に拍車がかかり、逆に全体的な市場は縮小するとの見方もある。
一般薬の市場拡大にはスイッチOTC等の新たな薬効群の登場なくしては難しい面がある。スイッチOTC化が遠のけば、ネットという販売チャネルの拡大だけでは活性化は困難になろう。
いずれにしても、ネット販売解禁以降も薬局・薬店の店舗には薬剤師や登録販売者などの専門家が販売に従事し、患者が症状に合った薬を選択する際のアドバイスを直接できるという最大のメリットを愚直なまでにアピールしていくことが必要だ。
むしろ今の状況を逆手にとり、専門家を介した生命関連商品としての医薬品購入の重要性を一般生活者に説く、良いチャンスとして捉えるべきなのかもしれない。