夏の暑さが真っ盛りの中で、小売業にとっては秋冬シーズンに向けた準備が忙しくなる時期でもある。大手卸による恒例の秋冬向け展示商談会が先月、都内で相次いで開かれ、多数の小売関係者で賑わいを見せた。
ここ数年の特徴といえるのは、かつては展示会というと少しでも有利な条件で仕入れられるという“商談”の場であったが、今では提案の内容を店頭で具現化してもらい、結果的に“売り”につなげるという提案重視の傾向が顕著ということ。実際に、大木、ピップの両社の展示会でも、最近の世帯構造の変化、消費支出の特徴などのデータを掘り下げた提案が目立った。
このうち、大木の展示会で注目を集めたのが、「ネットとリアルの情報広場」と題したコーナー提案。一般薬のインターネット販売が徐々に拡大を見せる中で、ドラッグストアや薬局などの“実店舗”に何が求められるのか、購入側は何を求めているのかなどを、様々な意識調査も示しつつ、同社なりのあるべき姿を提案した。
例えば米国では、ネットは価格競争、店舗は顧客満足競争というように、ネットとリアルの共存共栄という現象がある。まずポイントに挙げられるのが「コンビニエンス性」で、[1]商圏や店舗の小型化、365日長時間営業、待たせないレジ、配送サービスによる便利さ[2]次の来店につなげる来店ポイント・特典、サービス(レンタルビデオ、クリーニング)の促進[3]自社サイトネットショッピングを活用して、注文後1時間で受け取れる。多店舗を活用した当日配送──がある。
このほか、アソートメント(見て、触って、感じて買える商品の提供)、スペシャリティ(専門性の強化)、トリートメント(気分の良い接客・サービス)、ロイヤリスト(優良顧客づくり)、エンジョイメント(楽しい買い物の提供)も、顧客獲得に欠かせない要素となる。
ネットの欠点である組み合わせ販売の強化、顔を見ながらのフェイス・トゥ・フェイスによるカウンセリングの強化、価格比較されない商品の強化なども、実店舗に不可欠な対応といえよう。
日本チェーンドラッグストア協会も、現時点では「医薬品のネット販売はしばらくは店舗への影響は少ないものの、徐々に打撃が出てくる可能性は否定できない」との見方だ。同時に「今こそ、しっかりとした医薬品専門家(薬剤師、登録販売者)の地位の確立、社会的位置づけが急務である」とも指摘する。拡大・成長路線が続いてきたドラッグストア業界が、一つの岐路を迎えている、あるいは進化・変化が迫られていると言うべきか。
要はネットにしろ実店舗にしろ、強みを生かして弱みを克服することが、最強のビジネスモデルとなるわけだ。薬に関する専門家がいて安心・安全な買い物ができる、身近で便利・融通がきく──など、実店舗の強みも多いはず。ぜひ製配販が連携し、医薬品販売業の新たな機能・役割の発揮を目指してもらいたい。