日本薬剤師会は約10年ぶりに薬局・薬剤師のための「調剤事故発生時の対応マニュアル」を改訂・名称変更し、「調剤行為に起因する問題・事態が発生した際の対応マニュアル」として作成した。まだ“案”だが、今年中に正式版が会員に届けられる。
全国の分業率(処方箋の受取率)は、70%台が視野に入っている。また、GE薬の使用促進策も拍車がかかり、かつて多くの薬剤師が望んでいた一般名処方も、その一環として実現。薬物療法の高度化と相まって、薬局におけるヒヤリ・ハット事例は増えつつある。今回、その状況を反映して改訂した。
改訂版のタイトルは「調剤行為に起因する問題・事態が……」と、いささか長ったらしい。前回、単に「調剤事故……」と括ったが、今回はその内容によって調剤事故、調剤過誤、インシデント事例(ヒヤリ・ハット)とに分け、「調剤行為に起因する問題・事態」として括った形だ。「調剤事故」は医療事故の一類型。調剤に関連して、患者に健康被害が発生したもの(薬剤師の過失の有無を問わない)と定義。
調剤過誤は、調剤事故の中で薬剤師の過失により起こったもの。さらに、薬剤師の説明不足や指導内容の間違い等により健康被害が発生した場合も「薬剤師に過失がある」と考えられ、「調剤過誤」となると定義する。
インシデント事例とは、患者に健康被害が発生することはなかったが、“ヒヤリ”としたり、“ハッ”とした出来事で患者への薬剤交付前か交付後か、患者が服用に至る前か後かは問わない――と定義している。
ここで注目したいのは、説明不足等も、結果として患者に「損害」を与えれば「過失」と位置づけた点だ。
先日、日薬による改定“事後対応マニュアル(案)”をめぐって、全国の担当者会議が開かれたが、これを担当する医薬安全対策委員会の若手委員であり、かつ弁護士資格も持つ方の講演を聴く機会を得た。
「事後マニュアルの本当の意味を理解して、使っていく必要がある。その後ろには法的概念があることを理解しておくことが大事」だと指摘した。改めて薬剤師の仕事が、法令遵守のもとにあることを思い出させた。
当たり前すぎて、つい忘れがちだが薬剤師、医療従事者は、多くの法律に縛られている。それは国民の健康な生活を確保するため。従って、その趣旨を守れず、義務を尽くせない者は法によって排除される。
最後に薬剤師法1条の解釈について「薬を渡し、『この通り飲んで下さい』では薬剤師の義務を尽くしてない。生活に合った服薬指導をし、生活に悪影響を与えず、健康になるようアドバイスすることが薬剤師の義務ではないか。それができて義務を尽くした、過失がないと言えるのではないか」と締めくくった。