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臨床研究不正、ディオバン以外も注視を

2013年11月8日 (金)

 厚生労働省は9月30日、国公私立大学や特定機能病院等に依頼していた臨床研究に関する自主点検の結果を公表し、2009年4月以降に開始された介入研究のうち118件が不適切に行われていたことが分かった。不適切事例のほとんどは、臨床研究に関する倫理指針が遵守されていなかった研究だった。

 自主点検の対象となったのは、国公私立大学附属病院、特定機能病院、早期・探索的臨床試験拠点、臨床研究中核病院を中心とした117機関。不適切事例のほとんどは、研究機関の長への年1回の進捗状況報告や終了時報告を忘れていたり、症例登録前に臨床研究計画の内容を公開するデータベースに登録されていなかった事例などだ。

 もともとは、降圧剤バルサルタン臨床研究のデータ改ざん事件をきっかけに、厚労省と文科省が臨床研究が適切に実施されているかどうか自主点検を行うよう実施医療機関に報告を求めたものだが、フタを開けてみると、皮肉にもバルサルタン事案だけにとどまらず、予想以上に臨床研究の実施基盤が揺らいでいる実態が明らかになった。

 実際、現在はバルサルタン臨床研究のデータ改ざん問題ばかりに注目が集まっているが、昨年だけでも3月に慶應大呼吸器外科教授が無断で骨髄液採取し、倫理指針に違反。5月には宮崎大医学部で同意なく鎮痛薬投与する違反、6月には元東邦大麻酔科准教授の約200本に及ぶ論文ねつ造、9月には東京医科歯科大学でIRB承認前に血液採取する違反が発覚した。

 さらに、今年7月にはバルサルタン臨床研究のデータねつ造が発覚したことにとどまらず、一般薬の肥満薬でもデータねつ造疑惑が発覚。これだけでも目眩がしそうなほどの不正である。肥満薬のデータねつ造に至っては、未だ詳細が明らかにされず、調査結果等も報告されていない。その点でむしろ、問題はバルサルタン臨床研究より大きいのかもしれない。

 厚労省の降圧剤検討会は中間まとめで、臨床研究の法制化を含めた検討を来年秋をメドに進めるべきとの再発防止策を打ち出している。具体的には、ICH‐GCPの遵守や予め臨床研究の実施を規制当局に届け出るIND制度の導入を挙げているが、実はこれらは以前から検討されており、2006年には京都大学元総長の井村裕夫氏らが臨床研究基本法(仮称)の制定を提言している。

 今後の議論では、倫理指針に違反した場合の研究者への罰則規定が設けられていないという点に着目し、臨床研究を規制する方向で法制化の検討が進むことが予想される。しかし、法制化に当たっては、これまでの経緯も踏まえ、アクセルとブレーキを兼ね備えた検討をすべきだ。日本の臨床研究の脆弱さが発覚した以上、不正防止は最重要だが、国民にメリットをもたらす臨床研究のあり方もセットで議論してほしい。




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