政府は12日に、一般薬のインターネット販売ルールなどを盛り込んだ薬事法改正案を閣議決定した。
同法案では一般薬の99・8%のネット販売を認める一方、スイッチ直後の23品目と劇薬指定5品目はネット販売を禁止する。また、処方薬は、省令で対面での販売が義務づけられているが、法律で明確化した。
その一方で、一部の薬に対する規制については、政府の産業競争力会議の民間議員である三木谷浩史楽天会長兼社長が、「対面でなくてもネットで十分に安全性を担保できる」と猛反発し続けている。だが、この主張は、本当に説得力があるのだろうか。いみじくもプロ野球・楽天の優勝セールの不当表示問題で、ネット販売の弱点が暴露された。インターネットショッピングモールの「楽天市場」で催された同セールで、17店舗が1045商品で通常価格を不当に高くし、割引率を大きく見せかける事件が発生したのがそれだ。
楽天は、「表示ルールが甘かった。チェック体制を改善する」と弁明しているが、泥縄式の危機管理システムでは医薬品の安全性は到底守れないことを肝に銘じるべきだ。
医薬品のネット販売を容認している諸外国では、偽造医薬品の横行が大きな問題になっている。ほとんどの一般薬のネット販売が認められるわが国においても、その可能性は否定できない。偽造医薬品によって取り返しのつかない健康被害が発生する前に、それを防止するチェックシステムの構築は不可欠となる。今回の不当表示のような金銭的被害と、一歩間違えれば死に直結する健康被害との違いを強く認識する必要がある。
ネット販売業界が狙っているのは、処方箋薬のネット販売で、電子メール処方箋も視野に入れている。さらに、究極の目標は、患者情報の収集にあると考えられる。すなわち、個々の疾患に合致した健康食品や医療機器、バリアフリー施工業者に至るまで様々な関連分野のダイレクトメールを患者の了解のもとに送付し、市場拡大を目指していると推測される。
とはいえ、偽医薬品の横行防止も含めてネット販売の安全性の第一歩は、まず、一般薬の販売で試されるのは言うまでもない。
一方、一般薬のネット販売という新しい手法が加わり、国民は対面販売との比較ができるようになった。これをチャンスと受け止めて、薬剤師は薬局のあり方をもう一度考え直す必要があるだろう。「薬局で一般薬の相談、説明が十分に行われていない」という国民の声を聞き入れ、これまで以上に患者・消費者に対する対応をしっかりやっていくのは当然だ。
加えて、医療用医薬品の疑義照会や服薬指導等により一層尽力し、国民に薬剤師の必要性をもっとPRすることも重要である。
従来より世間が抱いている「薬剤師」イコール「薬剤調製・交付」の手作業イメージからの脱却が急務である。今回のネット販売関連改正法案が国民にとって福音となるように、薬剤師にはぜひ頑張ってもらいたい。