一般用医薬品のネット販売の一部を規制する改正薬事法案が国会に提出された。今国会中に法案可決・成立後、来年春にも新ルールが適用される見通しである。
新ルールの概要は、小紙でも既報済みであり、ここでの言及は避けるが、この法案可決により、医薬品ネット販売のルールが法制化されれば、医薬品のネット販売議論に一定の決着をみる格好だ。
振り返ると、今回の法改正はケンコーコムとウェルネットの2社が起こした医薬品ネット販売の権利確認請求、違憲・違法省令無効確認・取消請求の行政訴訟で、今年1月、最高裁判所が第1類、第2類の販売を一律に禁止した省令を「改正薬事法の委任の範囲を逸脱し、違法で無効」と判断したことに端を発する。
その後の議論の過程では、ネット販売による対面販売並みの安全性確保、医薬品の適正使用が行えるようなルール整備の検討にウエイトを置くのではなく、結果として法整備を進めることで首の皮一枚のところで、医薬品のネット販売に規制の網をかけた形だ。
今回の改正法案では、スイッチ直後品については新たな「要指導医薬品」という区分を新設し、3年程度の市販後安全性評価が終了するまではネット販売を禁止する。その一方で、これまで省令で禁止していた第2類も含めた一般薬の大半がネット販売が可能になる大きな規制緩和になる。このことは、薬局、薬剤師が一般薬販売を「粗末」に扱ってきた結果のツケを払わされたとも言えなくはないだろうか。
薬局に限れば、規制緩和は今に始まったことではない。1975年の適正配置条例が違憲判決を受けての距離制限の撤廃。その後、一般薬の安売りの時代が始まり、それまでオーバーザカウンターとして、カウンター越しに販売されていた一般薬が、大型店舗の出現でセルフ販売が拡大してくるなど販売スタイルも大きく変化してきた。
その後、90年代には医薬分業が進展し、薬局薬剤師の業務が一般薬販売から調剤へシフトし、処方箋調剤をメインとする「調剤薬局」という呼び名も定着。薬局自体が一般薬を販売する施設から遠ざかった業態となり、そうした実情を生活者視点で見ると、医薬品販売はネットでも問題ないのではないかという方向に傾いても仕方がない。
一般薬とは「医薬品のうち、その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであって、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているものをいう」(薬事法第25条第1号)と記載されている。
今後、大半の一般薬で店舗とネット販売の共存が始まるのかもしれないが、両者において共通して言えるのは、販売した医薬品に対して情報提供はもとより、その患者が服用した後までの責任を負える姿勢に尽きる。単なる法律遵守の販売であれば、医薬品販売の形骸化は今後も続くだろう。