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【米国臨床腫瘍学会:ASCO】トランスレーショナルリサーチで多くの成果

2007年06月13日 (水)

 第43回米国臨床腫瘍学会が1日から5日間にわたってシカゴで開かれた。学会では、臨床応用を目指したトランスレーショナルリサーチをテーマに、新規の抗癌剤や、併用療法をはじめとする投与法の研究などの臨床試験成績が報告された。

◇NSCLC‐「アバスチン」の併用で生存期間延長

 進行性非小細胞肺癌(NSCLC)に対し、シスプラチンとゲムシタビンの併用化学療法療法に、「アバスチン」(一般名:ベバシズマブ)を加えることで、併用化学療法に比べ無増悪生存期間が20030%延長したとの海外臨床試験「AVAiL」の結果が発表された。

 試験は、NSCLCが進行した未治療患者で扁平上皮細胞癌ではない1000人以上が登録された無作為化二重盲検PIII。試験成績では、無象悪生存期間の延長のほか、手掌縮小率が最大で70%増加することや、腫瘍縮小効果期間も4・7カ月から6・1カ月に延長したことが認められている。

 日本ではアバンスチンは、進行結腸・直腸癌治療薬として中外から11日に発売。非小細胞肺癌の適応では現在PIIにある。

◇HER2陽性乳癌‐パクリタキセルにラパチニブ併用が有効

 HER2陽性の乳癌患者に対して、「タイケルブ」(一般名:ラパチニブトシル酸塩水和物)とパクリタキセルを併用することで、パクリタキセル単独投与に比べて、無増悪生存期間(PFS)中央値を有意に延長するという研究結果が発表された。現在実施中のPIIではラパチニブの単独投与で、脳転移に対する有効性も確認された。

 同試験は、HER2陽性乳癌患者91例をラパチニブとパクリタキセル併用群とパクリタキセル単独群に無作為に割り付け、PFSなどを評価した。

 その結果、単独群ではPFSが5・2カ月であったのに対して、併用群では7・9カ月と、有意に延長した。また、奏功率は単独投与群では36%であったのに対し、併用群では60%であった。

 重篤な副作用による死亡率は単独群では0・6%だが、併用群では2・7%だった。主な副作用としては、発疹や下痢、悪心・嘔吐などが確認されている。

 HER2陽性乳癌に罹患し脳転移した患者241人が参加しているPIIでは、7%の患者で、転移巣の大きさが半分以下まで縮小するなどの効果がみられた。さらに、19%の患者で、脳転移巣が20%以上縮小するという成績が得られている。

◇NHL”R‐CHOP療法で高い寛解率

 「マブセラ」(日本名「リツキサン」、一般名:リツキシマブ)による治療を受けたアグレッシブ非ホジキンリンパ腫(NHL)患者の転帰を、7年間にわたって追跡したフォローアップ解析が発表された。成績では、化学療法(CHOP療法:シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン) を受けた患者の生存率が36%だったのに対し、マブセラを加えた治療法では53%だった。第III相試験を行ったロシュでは、「マブセラは、生存期間を有意に延長する」としている。

 NHLは世界で100万人が罹患しており、毎年36万人が死亡。患者の約4割がアグレッシブ型で、治療しなければ半年以内に死亡してしまう。この解析は、フランス、ベルギー、スイスなど86施設、60080歳の約400人の患者を対象に行われたもので、解析対象となったのは化学療法群197人、マブセラ群202人。

 その結果、マブセラ群の半数以上が試験から7年過ぎた段階で生存。7年目で寛解していた割合も、化学療法群29%に対し、マブセラ群は52%と優れた成果が得られている。

◇「ソラフェニブ」‐肝細胞癌にも有用

 「ネクサバール」(一般名:ソラフェニブ)が肝細胞癌患者の生存期間をプラセボ群に比べ44%延長したという国際共同第III相臨床試験「SHARP」の結果が発表された。

 ソラフェニブは、癌細胞の増殖と血管新生の両方に関係する二つのクラスのキナーゼ(RAFキナーゼ、VEGFR‐1・2・3、PDGFR‐β、KIT、FLT‐3、RETなど)を阻害することが知られ、既に米国、EU諸国を含む 50カ国以上で、腎細胞癌の治療目的で承認されている。

 肝細胞癌では、、Raf/MEK/ERKシグナル伝達経路が関与しており、Raf‐1のシグナル伝達を阻害するソラフェニブが期待されていた。

 第III相試験では、北米や欧州などにおいて、全身投与薬による治療歴のない肝癌患者602人を、同剤投与群とプラセボ投与群の2群に割り付け比較された。その結果、プラセボ群では平均7・9カ月だった全生存期間がは、ソラフェニブ投与群では10・7カ月に延長した。

 2007年2月に実施した中間解析で全生存期間の延長効果が確認されたため、同試験は早期に終了しており、バイエルグループでは現在、FDAと欧州医薬品庁に、肝細胞癌への適応拡大で申請を準備している。

◇TS‐1とシスプラチンの併用‐未治療の進行胃癌で生存率延長

 未治療の進行胃癌患者に対して、抗癌剤「ティーエスワンカプセル」とシスプラチンを併用投与することで、ティーエスワン単独投与に比べて、全生存期間を2カ月延ばすことが報告された。第III相臨床試験「SPIRITS」で明らかになったもので、大鵬薬品とサノフィ・アベンティスが発表した。

 第III相試験では、進行性胃癌患者305人を、ティーエスワンとシスプラチンの併用療法群、ティーエスワン単独投与群に無作為に割り付け、全生存期間などを評価した。

 その結果、全生存期間が単独療法群では11カ月であったのに対して、併用療法群では13カ月だった。また、奏功率は単独療法群では31・1%であったのに対して、併用療法群では54・0%と高く、両結果とも統計的に有意差が認められた。

 一方で、併用療法による副作用は、ティーエスワンの特徴的な副作用である血管毒性、食欲不振や悪心などの消化器毒性の発症頻度が高まった。

◇「レトロゾール」‐乳癌再発リスクを減少

 閉経後乳癌治療薬「フェマーラ」(一般名:レトロゾール)の術後アジュバント療法が、乳癌細胞の増殖に関与するホルモンによって作られるプロゲステロンの受容体(PgR)やHER”2の状態にかかわらず、乳癌再発リスクを減少させたという海外臨床試験「BIG1”98」の解析結果が発表された。

 解析結果を受けてノバルティスでは、PgR陽性の患者にはアロマターゼ阻害剤の投与を控えるというデータもあったが、今回の解析結果からは「PgRの発現の有無によって判断すべきではないということを裏付けるもの」としている。

 フェマーラは、閉経後乳癌で細胞増殖に関与するホルモンであるエストロゲンを産生する酵素のアロマターゼを阻害する薬剤。解析では、抗エストロゲン剤であるタモキシフェンも含む、単独療法による5年間の治療を行った3650人から得た乳癌組織の評価が行われた。

 この解析では、タモキシフェンと比べ、エストロゲン受容体(ER)が陽性であれば、PgRやHER”2が陽性でも陰性でも再発リスクを減らせることが明らかになった。PgR陽性は30%減、同陰性で16%減、HER”2陽性は38%減、同陰性で28%減という結果だった。

◇転移性結腸直腸癌‐セツキシマブの併用を検討

 転移性結腸直腸癌に対し、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)を標的とした「アービタックス」(一般名:セツキシマブ)を併用することで、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善するという臨床試験結果が発表された。独メルクが行った第III相試験「CRYSTAL」で明らかになったもの。

 試験では、未治療の転移性結腸直腸癌(mCRC)患者約1000例をイリノテカンベースの治療であるFOLFILI療法(アイソボリン+5‐FU+イリノテカン)による単独治療群、FOLFILI療法とセツキシマブの併用治療群に無作為に割り付け、PFSなどを評価した。

 その結果、PFSが単独治療群では8カ月であったのに対して、併用治療群では8・9カ月と、有意に延長した。また、癌の腫脹、転移の危険性を15%低下させたという。さらに、サブ解析では単独治療群では39%、併用治療群では47%の患者で、腫瘍がの大きさが50%以下まで縮小した。

 日本では結腸直腸癌治療剤として承認申請中。



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