マウス実験でMSに治療効果
工業技術研究院(ITRI)は、コラーゲン様のスキャフォールド抗体「カラバディ」技術を開発した。三本の短鎖ペプチドで標的蛋白質に結合し、従来の治療法以上の薬効を発揮する。多発性硬化症(MS)や関節リウマチ、固形癌の疾患マウスを対象に、カラバディ技術を導入した抗CD3抗体を投与したところ、良好な有効性が確認された。今後、技術の実用化に向け、製薬企業との共同開発を模索していきたい考えだ。
ITRIは、台湾の政府系研究機関で、研究成果は必要とする機関やベンチャー投資機関に技術を移転し、特許や技術を積極的に運用している。2011年には技術支援で約1万5197件、技術ライセンス件数で639件の実績がある。メディカルデバイス&バイオメディカルテクノロジー部門では、予防・診断・薬物・手術技術から、バイオメディカルテクノロジー、看護まで幅広く研究開発を行っている。
既存薬の付加価値向上がテーマだ。ドラッグデリバリーシステム(DDS)を活用した技術開発には定評があり、民間企業への技術移転も進む。注射剤から貼付剤への剤形変更や、薬物送達に問題を抱える核酸医薬でDDS製剤を狙う。血液脳関門を通過する製剤技術も開発しており、オランダのベンチャー企業にライセンス契約を結んでいる。
次世代の抗体医薬の開発にもチャレンジしている。ITRIが開発したプラットフォーム技術が「カラバディ」。従来に比べ高い薬効が期待されている。
バイオメディカルテクノロジー・ディバイスリサーチラボラトリーズの邵耀華博士は、「第III相試験の有効性評価で有意差を示せずに開発を中止したプロジェクトが増えているが、カラバディ技術を使うことで、開発戦略を立て直すことができる」と意気込む。
多発性硬化症の疾患マウスを対象としたインビボ試験では、標準療法のインターフェロンβ1aを上回る有効性を示し、関節リウマチや固形癌でも良好な有効性が確認された。チンパンジーを用いた試験でも安全性が確認されており、サイトカイン放出症候群のリスクもないことも認められている。来年3月に、臨床試験を実施する予定だ。
既存の抗体医薬より、少ない投与量で済む可能性がある。邵氏は、「日本の製薬企業にもアピールしていきたい」と意欲を示している。
この記事は、「薬事日報」本紙および「薬事日報 電子版」の2014年1月1日特集号‐時の話題‐に掲載された記事です。