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薬局で自己採血できる土壌整備を

2014年03月07日 (金)

 昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略」では、予防・健康管理の推進に関する新たな仕組み作りが盛り込まれた。これは、薬局を地域に密着した健康情報の拠点として、一般用医薬品等の適正使用への助言や健康相談、情報提供など、セルフメディケーション推進のために薬局・薬剤師の活用を促進するもので、薬剤師への期待の大きさがうかがい知れる。

 2014年度政府予算の概算要求にも、地域薬局を健康づくりのための情報拠点とする予算として2億4000万円が計上され、各都道府県の薬務行政と薬剤師会による地域実情に合致した具体的な事業が展開されようとしている。

 疾病の予防やセルフメディケーションに対する考え方が国民の間で浸透する中、薬局・薬剤師はどのような役割を果たせばよいのか。健康に関してファーストアクセスする地域の「健康ステーション」となり、医師への受診勧告を適正に行う「薬剤によるトリアージ」の実践が、重要な役割の一つになるのは間違いない。

 「トリアージ」は本来、災害医療や病院の救急外来で患者の重症度を識別し、治療の優先度を決めることを意味する。では、薬剤師がトリアージを行う上で、その判断材料として何が考えられるか。

 相談内容や症状だけで来局者の体の状況をきちんと判断するには限度がある。エビデンスに基づいたトリアージを行うには、臨床検査情報が欠かせないだろう。

 従来、血液検査は、病院・診療所を中心に実施されてきた。だが、最近は、早期予防医学の観点から、医師の指示ではなく市民がセルフチェックを目的に行う自己採血による血液検査が注目されるようになってきた。

 具体的な事例としては、東京・足立区や徳島県の薬局で実施されている指先微量自己採血によるHbA1cプロジェクト「糖尿病診断アクセス革命」や、三菱ケミカルホールディングス子会社の「健康ライフコンパス」とドラッグストアが提携して生活習慣病などを自己採血でセルフチェックする「じぶんからだクラブ」などが挙げられる。

 これらの取り組みの成果報告や、医学部での科学的な研究によって、地域での自己採血による血液検査のメリットは証明されつつある。とはいえ、その一方で、測定値のバラツキをなくす臨床検査の精度管理問題や、医師法・薬事法・臨床検査技師等に関する法律などの壁が横たわっているのも否めない。

 法律に関しては、薬局で薬剤師が検体採取の技術指導を行い、測定を登録衛生検査所で実施することは特段問題はないようだ。だが、残念ながら「検査結果について薬剤師が来客者に説明する」行為は、現在の医師法ではグレーゾーンになるとの指摘もある。薬剤師による検査結果の説明は、医師の診断行為に抵触する可能性があるためだ。

 薬剤師が検査結果を患者に説明して適切なトリアージを実施するには、日本薬剤師会が中心となって、国や医師会にその有用性をしっかりとアピールして、自己採血によるセルフメディケーションの土壌整備を行うことが不可欠となるだろう。



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