先月31日、厚生労働省は臨床検査技師法に基づく告示の一部改正を公布した。「自ら採取した検体について、診療の用に供さない生化学的検査を行う施設」が新たに追加され、薬局でもこうした取り組みが認められることになった。従来、薬局での自己採血に関しては衛生検査所の届け出が必要とされていた。
その一方で、大学などの研究機関と連携する共同研究などの目的で、既に国内ではドラッグストア、薬局などの店頭や、それら企業が開催する健康イベントなどで、自己採血による生化学的検査は行われてきた。その意義や成果については、各薬系学会などでも発表が行われている。これら検査はHbA1c、総コレステロール、中性脂肪、尿酸など、一般的な健康診断などで行う項目が中心である。
これまで薬局等での生化学検査は、それ自体が診断行為につながるといった見方もあり、法的にはグレーゾーンとして扱われていた。こうした中で、経済産業省が進めるグレーゾーン解消制度で、自己採血の結果に基づく健康関連情報の提供などの事業が、医師のみに認められている「医業」に該当するかを照会。その結果、医業に該当しないことを確認。さらに事業者が検査結果の事実を通知することに加え、より詳しい検診を受けるよう勧めること等も該当しないことも確認された。
これら事業の意義としては、自らの健康管理を行う機会を身近に提供できることや、糖尿病等の早期発見を通じ健康長寿社会の実現に資する、とした文言が記載されている。今回、こうした流れを受けて、厚労省は、臨床検査技師法に基づき厚労大臣が定める施設の一部改正を告示した格好となる。今後、医師法などとの関連も含めた形で、実施に向けたガイドラインも示されるものと見られる。
2010年10月から東京都足立区や徳島県の薬局店頭で指先自己採血によるHbA1c測定によって糖尿病や予備群を早期に発見し、医療機関への受診勧奨を行ってきたプロジェクト「糖尿病診断アクセス革命」事務局では今回の改正を受け、「薬局等での自己採血検査は、今後、一層普及していくものと予想される」との見解を示している。
過去の社説でも何度か触れたが、今年度は薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点の推進事業がスタートする。ここでは、健康づくりと適切な薬物療法を推進する「健康づくり支援薬局」の存在価値をアピールすることがポイントになる。
今後、こうした取り組みが薬局等の店頭で飛躍的に推進していくかどうかは別にして、薬局が医療提供施設としての役割を果たしていく中で、一つの大きなツールにはなるだろう。
自己血液採取による検査普及に向けては、課題は多いかもしれない。ただ。こうした取り組みが、医師と薬剤師の相互の連携により、何よりも患者のセルフメディケーション意識の高まりにつながるものとなるよう期待したいところだ。