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「医師の偏在」に処方はあるのか

2007年6月29日 (金)

 小児科、産科、救急医療の勤務医不足が年々深刻さを増している。昨今では都市部でも、医師不足によって小児科や産科が閉鎖に追い込まれる病院が出始めるほどだ。その一方、そうした現状とは裏腹に、わが国の医師免許取得者数は年々増加傾向にある。

 毎年、8000人の医学部卒業生のうち、7000人強の新たな医師免許取得者が誕生しており、現在、わが国の医師数は27万人を超えている。この数字を見ると、医師の絶対数の減少によって、これらの診療科が医師不足に陥っているのではないことは明白だ。にもかかわらず、大病院を中心とした勤務医不足に歯止めがかからないのは、“医師の偏在”にあると言ってよいだろう。

 2004年度に新人医師の臨床研修を義務化した「新医師研修制度」が導入されて以来、勤務医として大学病院の医局に残る研修医は、毎年誕生する7000人の医師のうち、その半数にも満たない3000人程度になったと言われている。

 研修医はこれまで、所属先の大学から各病院へ派遣されるのが通常であった。ところが「新医師研修制度」導入後は、研修医と受け入れ先病院のマッチングにより研修先が決定されるようになった。研修医の希望が聞き入れられることで、すぐに戦力とみなされて、給料も高い中央の有名病院に研修医が集中するという歪み現象を引き起こした。この現象が、へき地での医師不足を助長し、さらなる地域格差を生んだのは言うまでもない。

 新しい医師研修制度は、具体的に小児科、産科にどのような影響を及ぼしたのか。研修医制度の変更により、04年からの2年間は新たな医師の誕生がない空白期間が生じた。この影響で大学病院でさえも医師不足に陥り、それを補うために市中病院へ派遣していた医師を引き上げてしまうケースが多発し、地方の病院の小児科・産科の勤務医不足を加速させていった。

 実際、産婦人科では、全国で大学から常勤医の派遣を受けている病院の4分の1、非常勤の派遣を受けている病院の3分の1が医師の引き上げを経験しているという。1人の研修医の引き上げがキッカケとなって労働環境が悪化し、さらに産婦人科医が辞めていくという悪循環を招き、残った医師だけでは安全な分娩が不可能となって産科を閉鎖した病院も珍しくない。

 とはいえ、小児科、産科の勤務医不足は、医師研修制度改革の影響だけで説明し尽せるものではない。救急医療も含めた小児科、産科の勤務医には、365日24時間対応、重い責任、高いリスクが余儀なく課せられる。

 これら劣悪な労働条件の中で、慢性的な過労に耐えて精いっぱい頑張っているにもかかわらず、待遇面では全く恵まれないという根本的な問題が横たわっているからだ。小児科、産科、救急医療の勤務医が、働き詰めで燃え尽き症候群に陥り、開業の道に進んだ例も多数あるようだ。

 現実に、新人医師の間では、眼科や皮膚科が人気を博しており、小児科、産科、救急医療などは敬遠されがちだと聞く。

 こうした現状を打破するには、産科、小児科、救急医療共に保険点数・診療報酬を増やし、それぞれの診療科の医師を増員する以外に手立てはないだろう。そのためには、まず、勤務医と開業医の収入バランスの是正から取り組む必要があるだろう。




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