これから薬剤師・薬局は何を目指せばいいのだろう。医薬分業の進展と共に、一般用医薬品を手放し、いまや実際に売っているのはドラッグストアであり、その実態を反映した新たな販売制度へと変更された。さらに、薬剤師以外の医薬品販売の専門家として「登録販売者」が登場することになった。まさに公的保険頼みの傾向が一層強まっているように映る。
その代わりというか、裏返しということか、調剤を実施する薬局が「医療提供施設」となり、既に医療法に書き込まれていた医療提供者としての「薬剤師」が、その働く場である保険薬局ともども“医療者”の仲間入りを果たしたことは周知のことだ。
さて、今年は天気予報的には夏らしい夏になりそうだが、投票日が延長しそうな参議院議員選挙、それに続く診療報酬改正に向けた本格的な論議などを控え、意識のある薬剤師にとっても相当、“熱い”夏を迎えることになるのではないか。
特に過去3回(6年間)に及ぶ診療報酬、調剤報酬のマイナス及びゼロ改定の影響は大きく、もし、ジェネリック医薬品の使用促進策が、うまく機能していたら、弱小薬局は経営的になお一層疲弊せざるを得なかったのではないか。今後は、「変更可」から“新薬を指定する”ような、強制的な方向性も話題に上げられており、今まで以上の在庫が迫られる可能性は否めない情勢だ。さらに、従来の医療保険制度から分離独立する後期高齢者医療制度の方向性についても、“マルメ”論議が取り沙汰されており、予断を許さない状況にあろう。
先日、経済学者の西村周三氏(京都大学副学長)が、日本薬局管理学研究会で特別講演をした。西村氏は、改めて「医療費の半分は人件費」と指摘、「経済が成長した時に(働く)皆さんの給与を上げるのは当たり前」と述べ、次回診療報酬がある程度プラス改定になる可能性があると、個人的な見解を示した。
給与に関連して西村氏はコムスン問題に触れ、医療関係職以外の給与が高くれば、介護職から転職するのは当たり前で、結果として人手不足となり、「つなぎ止めるためには給与アップしかない」と、背景の一端を示した。ちなみに、「それに気づかず、まだまだ医療費は効率化できると言うバカがいる」と言い放った。
その一方,薬剤師の将来については「薬剤師は雇われ人にならざるを得ない」と、暗い見通しを示した。「医療を産業と考える集団」の意向が台頭する中で、教育や医療の世界にも『選択と集中の時代』が浸透しつつあり、これに抗うことは難しいというのだ。実際に小さな薬局の衰退をよそに、「大きなチェーン薬局がどんどん増えている」と指摘。最近のM&Aの話題は、確かに“大型”が目につくようになった。
現内閣も、医療保障を充実する方向を示さない中、公的保険という一定のパイの奪い合いは、激しさを増さざるを得ない。ただ、公的保険以外の医療関連領域および「健康指導産業」が大きく伸びる可能性を指摘した。「薬剤師の仕事をもう少し広く捉え、『国民の健康づくり』という大きな枠の中で、自分たちの仕事を考えるべきではないか。キーワードは行動変容」「薬局も別の生き方を考えることが非常に重要」と述べた。つまり、薬剤師にはそれだけのポテンシャルがあるのだ。