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医療IT化の意義を考えて

2007年07月09日 (月)

 これから、月間549施設のペースでレセコン導入済みの調剤薬局がレセプト電算(レセプト電子請求機能)処理システムを導入していかないと、レセプト完全オンライン化が義務化される2009年4月1日(レセコン未導入の場合は11年4月)に間に合わないという。10年4月が期限の診療所(レセコン有)に至っては、月間1682というハイペースでの導入が必要だという。ちなみに病院でも292である。5日に行われた保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)の07年度業務報告会で明らかにされた。

 遅々としてIT化が進まない医療界に対して、05年に政府・与党医療改革協議会が「医療制度改革大綱」で、06年には内閣府IT化戦略本部が「IT新改革戦略」でレセプトの完全オンライン化推進を掲げた。それを受けて厚生労働省が06年4月10日に「療養の給付等に関する請求省令の一部を改正する省令」を施行し、猶予期間はあるものの08年度から順次原則完全オンライン請求とすることとなった。まずは、金銭的なインセンティブからIT化を進めようという算段だろう。

 JAHISが懸念しているのは、病院、診療所、歯科、調剤薬局それぞれに設定されている期限の最終年度にシステム導入が集中する“駆け込み導入”である。オンライン請求の前提は、レセプト電算(電子レセプト)処理システムが導入されていることであるが、今年4月末現在の普及状況は、医科で全国平均22・1%、普及率が高い調剤でも76・8%という状況だ。レセコンを導入しているにもかかわらずレセプト電算に参加しているのは、病院18・8%、診療所9・3%、調剤57・1%とわずかである。レセプト電算未参加数を設定されている導入期限までの月数で割ったのが、冒頭に紹介した数字である。

 システム導入には、人的な作業が多いことや、確認試験を3回(月1回)実施した場合に、確認試験申請から本請求まで約5カ月の期間が必要であり、最終年度に集中したら対応が難しいとのことだ。よって今後は、医療機関への広報を強化しつつ、計画的な導入が必要であることを訴えていくことにしている。

 義務化ということは、すなわちオンライン請求以外では受け付けないということであり、システムを導入していないと保険請求による支払い(お金・収入)がもらえないことを意味する。行政にしては、思い切った方法を打ち出したわけだが、それほど、日本の医療界でのIT化が進んでいない状況に不安を駆られ、苛立った現れでもある。

 昨年4月に公表された総務省の実態調査報告書によれば、お隣韓国のレセプトオンライン率は04年で既に93・5%に達し、しかも、オンライン化による事務経費削減額は、審査支払機関で年間16億円(実績)、医療機関では年間233億円(推計)だったのだから無理もない。

 もっとも、経費削減だけが目的ではない。IT新改革戦略では、レセプトのデータベース化、疫学的な活用による予防医療等の推進にも役立て、健康増進や国民医療費の適正化にも期待が持たれている。

 レセプトオンライン化は、JAHISが実現を目指す「日本版EHR」(生涯健康・医療電子記録)における各種システムの一つに過ぎない。医療だけでなく、保健、福祉も含めたIT化の加速を期待したい。



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