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中国市場への進出や事業活動を本格化させる企業が増える一方、中国での商品の偽造が国際問題化している。そのため、「中国市場への進出に当たっては、企業として取るべき対策や法的な側面を知っておくべきだ」と、小笠原直樹氏(NPO国際公正取引推進協議会事務局長)が、13日に都内で行った講演で解説した。
小笠原氏は、ニセモノが出回ると、本物製品が市場から駆逐されかねないとして、「進出前に偽造対策費用を予算化する」ことを求めた。また、マフィア化した偽造団への対抗には、警察や公安など捜査当局との協力や、社内担当者にそのOBを置くことも考慮すべきだとした。中国の法規制では、偽造防止技術には中国で許可済みのものを使う必要があり、取り締まりが厳しくなれば、対応を迫られると指摘した。
講演は、医薬品や包装業界関係者を対象にした「創包工学研究会第34回講演会」で行われた。小笠原氏は、調査会社のデータを引用し、中国では本物製品が売れ始めてくると、ニセモノが出回り始め、最終的に「ニセモノが逆転してしまう」と述べ、「対策は早めにすべき。中国は人件費などコストが安いことを前提に企画書を作ってしまいがちだが、ニセモノが出回ることを見越して対策費用を計上した予算書を作らなければいけない」と指摘した。
米国企業は国際的な偽造防止対策費用に、年間およそ1000400万ドルを計上し、中には1000万ドル以上の会社もある。きちんと防止できれば、正規の売り上げにもつながり、防止費用も回収できるとの考え方が背景にあるという。
対策としては、知的財産保護活動と共に「警察、公安などと協力した摘発等の対策」も必要と指摘。さらに、中国で起こり得る、内部不正による防止技術の流出、外部業者と販売店との癒着や輸送業者による本物商品とニセモノのすり替え、抜き取りなどを防止できる人材を担当者に置くことを求めた。そのため知的財産担当者だけでは限界があり、欧米企業ではFBIやCIAのOBを活用しているところも多いという。
偽造防止技術は、複数の技術を組み合わせることを提案。その中で二次元バーコードは「コピーが可能で防止技術とは言えない」とし、磁気バーコードや紫外線や赤外線などに反応する特殊インクを施したバーコードが、その検知機器も安価なことから有効だとした。また、製品に貼付した認証タグを生産時、出荷時、納品時などで読み取り、それを中央のデータベースで管理し、流通状況をトレースできる仕組みも有効な対策の一例に挙げた。
ICチップを利用したタグであるRFIDに対しては、いくつかの問題点を挙げた。この技術はファイザーのED治療薬「バイアグラ」の偽造防止に活用されているが、同氏はICチップが高くランニングコストが多額なことや、ICチップが解読可能であること、破損した場合の対応、開発エンジニアがマフィア対策として開発していないことなどを難点だとした。
中国の法規制にも触れ、国家質量監督検査検疫局による2002年制定・施行の「製品偽造防止監督管理弁法」を解説した。同法は、偽造防止技術を持つ者に対しては、国の審査を経た上で同局が公布する生産許可証取得を義務づけ、海外の技術は登録登記することとなっている。それに対し、製品のメーカーは生産許可証か登録登記された偽造防止技術を選択することとなっている。違反した場合は、罰金などが課される。
同氏によると、現時点までに同法に基づく取り締まりがなされていないが、日本の技術で登録登記されているのは一つだけといい、もし現行商品に施している防止技術が未許可や未登記の場合は、防止技術には中国企業のものを新たに入する必要が出てくる可能性を指摘した。さらに、市場や工場の在庫、販売済みの場合の対応については「全く分かっていない」のだという。
同氏は、中国進出には法的対応を含め万全の偽造対策を行うことを強く訴えた。