長く医薬品業界で働く人たちからすると、隔世の感の思いだろう。かつては存在感が薄かった後発医薬品(ジェネリック:GE)が、今や政府の経済財政運営の基本方針である「骨太の方針2007」に取り上げられたからだ。方針には、GEの使用を促し、今後5年で全ての医薬品に対するGEシェアを倍増、30%以上にすることが盛り込まれた。
医療費の負担軽減、GE市場の活性化に寄与することが期待されるが、GEメーカー、その業界団体に意識改革を迫る内容であることも認識しなければならない。
特に重要なのは、国際化への意識だ。
今は日本国内(その一定地域内)での製造・供給、その中での市場競争で済んでいるかもしれない。それが、国を挙げて市場を拡大する方針を取ったとなれば、新薬市場同様にGE市場もまた、海外メーカーのさらなる参入、国際競争が必至だ。
海外メーカーに聞くと、自らの製品を日本に投入したり、共同で販売展開したりする一方で、日本の製品を海外に流通させたいということも描いていたりする。日本の高い品質の製造能力、そして開発ノウハウも魅力という。また、そういう事業提携だけでなく、M&Aも視野にある。
その点、GEメーカーの団体である医薬工業協議会の澤井弘行会長は本紙に、「GE外資大手の参入や日本の新薬メーカーの参入などで、GE業界の競争が激化して活性化していくことは良いことではないでしょうか」との認識を語っている。そうとはいえ、国際競争である。全体的には、大手GEメーカーを含め、どういう戦略を持ち合わせているのか、海外メーカーほど明確ではないように思える。早急な対応が求められよう。 一方、業界団体レベルでは、国際的な連携、薬事規制の国際調和への取り組みも求められることになる。対応としては、IGPA(国際ジェネリック医薬品連合会)への医薬協の加盟になるが、2年間のオブザーバーを経て、11月のIGPA総会では正式加盟が議題となる。
これは、IGPA側からも歓迎されており、医薬協も正式加盟の必要性は感じているが、医薬協のIGPA対応委員会は、6月下旬の会見では明確に方針を示さず、今秋までに結論を出すと述べるにとどまった。「2年間のオブザーバーで、何をしなければならないかが明らかになり、(体制づくりや人材の確保など)大変過重のかかることだと理解できた」と理由を説明したが、早期の決断、それに基づく早期の体制づくりが必要だろう。
日米欧の薬事規制を調和するICH(医薬品規制調査国際会議)は、新薬に対する規制が中心とはいえ、主に品質分野のトピックはGEメーカーも関係してくる。その議論で新薬メーカーと利害が対立した場合は、IGPAを通じて意見を言うこともあろう。欧米ではIGPAを通じて意見反映するルートがあるが、日本は持っておらず、そこに医薬協は参画したいという思いがある。それは必要なことだ。
しかし、ICHは日米欧の国レベルの利害も衝突し、駆け引きが行われる。IGPAだけでなく、日本の中にも議論に参画し、意見を反映、表明できるルートを作ることを考えなければならない。