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注目したい“利益相反”議論

2007年7月30日 (月)

 「利益相反」問題で、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会や、厚生科学審議会はそれぞれ委員会を設置し、年末を目指してガイドライン作りなどの作業を進めている。タミフルに関わる研究者と企業の事例で、改めて問題提起され、早急な対応を求められているからだ。

 研究者と企業との「利益相反」がなぜ問題になるのか。研究者が企業との関係で、研究に何らかの疑いがかけられれば、研究や日本の研究制度自体が存続しなくなってしまうからだ。そこで、「利益相反」があることを明らかにし、研究者と企業の関係を透明化することで、社会の信頼を確保した上で研究を進め、新たな医薬品等の提供ができれば、国民にとって利益が大きいにほかならないからだ。今さら言うまでもないことかもしれない。

 厚科審委員会の委員でもある宮田満氏(日経BPバイオセンター長)は、「必ずしも利益相反は悪いわけではない」と指摘する。特に、今や創薬を担う大学発ベンチャーは多く、その創業に当たっては大学等の研究者が中心になると共に、企業等から資金を調達しなければ、自社が持っているシーズの実用化ができない状況もあるからだ。

 そこで宮田氏は、利益相反と法令違反は明確に区別すべきとしている。法令違反は法令上の責任として刑事罰や行政罰、民事上の損害賠償責任が発生する。また責任の主体は、規制に違反した個人・法人の責任者等で、違反は回避されるべきであり、法令による一律のルールの下、裁判所で最終的な判断が下されるものだ。

 しかし利益相反は、社会に対する説明責任や社会的責任が問われるものであって、研究者の所属する大学・組織に責任があるという。さらに、利益相反は必ずしも回避する必要はなく、情報開示やモニタリング等により透明性を高めることが必要で、各大学・組織ごとに判断基準を示したり、その組織内の利益相反委員会で基準に則り判断を下すといったマネジメント能力が必要だという。つまり、利益相反は大学・組織の問題であり、どのような判断をするのかは大学・組織に委ねられるというわけだ。

 こうした考え方は、2002年11月に示された、文部科学省の科学技術・学術審議会の産学官連携推進委員会「利益相反ワーキング・グループ」の報告書で指摘されている。

 また、「医学・医療分野における臨床研究に係る利益相反については、特に慎重な対応が求められる」とも指摘。その理由として「患者の生命・身体にかかわると共に、医学研究の現場で治療法が考察され、その現場の研究者が治験を実施し、かつ研究者自らが考案した治療法を商業化するベンチャー企業の事業にかかわることが多いという特性がある」ことを挙げている。そのため、「通常の利益相反マネジメント・システムに加えて、さらに厳格な対応策をとることも考えられる。報告書の内容を踏まえつつ、医学・医療関係者を交えて十分な議論がなされることが望まれる」と、この時点で警鐘を鳴らしている。

 ただ、文科省が04年6月現在の各大学の取り組みを調べた結果、利益相反に対応するポリシーや管理体制を整備したのは89大学中22大学にとどまり、そのうち利益相反ポシリーを作成したのは22大学、利益相反マネジメント体制を整備したのは11大学でしかなかった。思想はあっても実体が伴わない状況が明らかになっている。

 厚労省でも、やっと利益相反に対する動きを始めた。厚科審委員会では、組織にポリシー策定や利益相反委員会設置が論点として上げられている。今後の議論を注目していきたい。




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