医師へのターゲティングモデル確立
JSOLは、分析ソリューション技術を強みに、製薬企業の質の高い情報提供活動を支援する。製薬企業が集積した膨大な情報から、ターゲットとする医師に対して最も効果が高いと思われるアプローチ方法を導き出し、営業現場での効果検証を繰り返し、より訴求力の高い手法に仕上げていく。同社が提供するソリューションは、企画段階から製薬企業の営業・マーケティング部門と協業し、問題点の可視化から営業生産性向上に必要な業務・IT施策を一緒に検討していくことにある。
同社は、前身の日本総合研究所として設立され、2009年1月にNTTデータと資本提携し、JSOLの社名で事業展開している。もともとITコンサルティングからシステム構築・運用を強みとしていたが、NTTデータグループと資本提携したことで、製薬企業に提供できるコンサルティング・ITソリューションの幅が拡大した。
25年に向けた医療提供体制の変化に伴い、製薬企業の営業・マーケティングの戦略、医療機関への情報提供活動(MR活動)が変わっていくことが予想される。特に、医療機関の機能分化・強化と連携、地域完結型医療体制への移行により、製薬企業は、地域ごとの医療提供体制に応じた情報提供ニーズへの対応が求められ、従来のような医師への訪問回数を重視した「シェア・オブ・ボイス」の営業手法と、「シェア・オブ・マインド」の営業手法の使い分けを意識した、ターゲティング・セグメンテーションの検討が必須となってきた。
JSOLでは、4月に製造ビジネス事業部を立ち上げ、医薬分野に製販一体化した組織体制をスタートさせた。同社の特徴は、ITコンサルティング、システム構築・運用から技術を適用し、営業・マーケティングソリューションを提供するモデルに表れている。
製造ビジネス事業部コンサルタントの河本直純氏は、医師への情報提供活動で効果を上げるためには、“PDCAサイクル”が重要になると話す。
集積した情報から仮説を立て、実際に実行して何が良かったか、悪かったかを検証する。「これまでは『P』『D』までは実施していても、『C』『A』がなかった。われわれが強みとする分析技術を活用し、仮説検証サイクルを回していきたい」と意欲を示す。
製薬企業の戦略計画からリソースを配分し、ディテールを計画、ターゲティングした個別の営業戦略に落とし込む。同社は、SAP社から導入した機械学習ソリューション「SAP InfiniteInsight」を用いることで、個別の医師に対する効果的な情報提供を実現する「ドクターターゲティングモデル」を確立した。
訪問履歴や使用した販促資材、インターネットを活用した講演会など様々なデータから、医師の処方に影響を与えていると思われる項目を分析できる。製造ビジネス事業部コンサルタントの平野保氏は、「従来の統計ツールを使った分析だと2~3カ月かかったのが、数日で同程度の分析ができる」と説明する。
膨大に蓄積した情報の中で、売上との相関関係が高いデータは何なのか。誰がターゲットなのか。どんな宣伝をすればいいのか。医師から収集した情報を分析し、次の営業手法を考える「クローズド・ループ・マーケティング」(CLM)を試したところ、従来のMR活動で収集した情報では見えなかった顧客ニーズが分かるようになってきた。
個別ソリューション、製品を訴求するというよりも、システム基盤から技術を適用し、顧客との対話の中で、効果が高いアプローチとなる仮説を立て、それに基づくトライアルを行い、データを分析・検証していく。
平野氏は、「現在は製薬企業とトライアル実施段階だが、少しでも早く動かせるようにしていきたい」と意欲十分だ。ターゲティングモデルだけでなく、市販後調査データのプロモーション活用やマルチチャネルによる情報提供有効性評価なども視野に入れている。
今後は、SFAに変わるりSNSの要素も盛り込んだコラボレーションツールとして、タグ付けすることでタイムラインから他のMRがどの医師に会い、どんな情報を収集したかをいち早く社内で情報共有できるソリューションも投入していく計画だ。将来的には実臨床の疾患情報も取り入れていきながら、MRが多職種連携・医療連携で活躍するためのソリューションに進化させる。
JSOL
www.jsol.co.jp/