生活習慣病を対象とした日本初のOTC薬として持田製薬が2012年末に製造販売承認を取得した高脂血症治療薬「エパデール」。同社の医療用製剤をスイッチOTC化したものだが、その承認要件として課せられた300例の適正使用調査のデータ収集が想定より進んでいないようだ。
同剤は13年4月から大正製薬が「エパデールT」、日水製薬が「エパアルテ」の名称で発売を開始。大正では約1500店舗、日水は対象店舗の絞り込みを行った調査実施店約150店舗限定で販売を開始し、データは各社が150例ずつ集める予定だった。
そうした中で9月初旬、日水は販売先の薬局に対して、「エパアルテ」の販売中止を通達した。理由は、販路が小規模である同社は、適正調査の登録が難航し、今後も目標とする150例を確保することが困難と判断したためだという。一方の大正は、研修を受けた「エパデールT販売認定薬剤師」のいる全国約1500店舗で「今まで通り変更なく、販売を継続していく」との方針は崩していない。
昨年4月の発売当初には、同年9月頃までに両社で300例を収集し、その後、全国に正式発売という想定を示していたが、発売から1年半が経過する現在、その見通しは立っていないようだ。
同剤は、健康診断等で指摘された“境界領域の中性脂肪値の改善”を効能とするスイッチOTCとして、中性脂肪値が「150mg/dL以上300mg/dL未満」の人に限り服用できるという制限がある。また、厚生労働省の指示によって、薬剤師が服用対象となる購入希望者を判断し、服用指導や受診勧奨等を適切に行えるかを確認する適正使用調査が実施されるのもスイッチOTC薬としては異例だった。
あるドラッグストア企業では同品を数十店舗で取り扱うが「発売以降、販売数量は全社で月平均数個レベル」だという。そうした関係者からは「メーカーサイドが大きな広告宣伝を行っていない現状下、製品名、効能の認知度が浸透していないことも販売不振の要因の一つ」とも指摘する。
さらに同剤は、販売時のセルフチェックシートにも、同剤の使用は「医療機関を受診した人に限る」との制限が冒頭に記載されている。このことが結果的に、薬局店頭で、患者に説明をして、きちんと理解を得て販売するにはあまりにもハードルの高い製品となったのだろうか。
同剤のスイッチOTC化に至るまでには、「生活習慣病治療薬がOTC薬化されるのはなじまない」との考えを一貫して主張してきた日本医師会の存在があり、販売条件に、そうした考え方が色濃く反映されていると言われている。その意味では、今回の「エパデール」に限らず、医療用の生活習慣病治療薬のスイッチOTC化に向けては、医師、薬剤師双方の連携を考慮した取り組みを進めていくことが必要不可欠な要素なのかもしれない。