厚生労働省「登録販売者試験実施ガイドライン(GL)作成検討会」の議論を経て、6月末には受験資格を含む認定試験の概要が報告書として示された。来年度からの登録販売者試験実施に向けて、行政サイドも着々と動き出している。今月1日には、厚労省が各都道府県を対象に、試験実施ガイドラインの説明会も開催した模様であり、近く正式な通知も発出される見通しだ。
GL検討会の報告として示された内容を大枠で整理すると、▽試験の実施方法▽試験問題数▽試験時間や合格基準――など、事務的作業上の必要項目と「受験資格」であった。注目された受験資格は、当初の見込み通り、「高卒(程度)以上、実務経験1年」で収まった。
受験資格要件で少し疑問に感じるのは、従来の薬種商販売業者認定試験と異なり、薬学部卒業者に対して試験の免除規定は設定されなかったものの、薬学部6年制課程の卒業者には、1年の実務経験が免除されることになった点である。報告書によると、薬学部が行う病院・薬局などでの実務実習が、1年の実務経験に相当するという考え方のようだ。
薬学6年制における薬局実務実習は2・5カ月が標準、長くても数カ月と考えられ、しかもメインは調剤業務が想定されている。その一方で登録販売者は、OTC薬の対面販売による情報提供などが主要業務となる。揚げ足を取るわけではないが、薬学6年制における「数カ月の薬局実務実習」と非薬剤師による「1年間のOTC薬販売」が、同等と見なされるということだろうか。
薬学6年制課程の卒業者が、登録販売者試験を受験するケースは稀かもしれない。しかし、リスクの程度に応じて医薬品販売の専門家が関与し、適切な情報提供(対面販売)を行うことが、医薬品販売制度を改正した主旨のはず。OTC薬販売の現場では、実習と勤務で性質や状況が全く異なるケースも少なくない。それだけに実務経験のあり方自体は、今後も課題として引き続き議論していく必要があると思う。
また、登録販売者試験を実施する地方自治体にとっても、受験資格要件の確認は骨の折れる作業になるだろう。先日、日本チェーンドラッグストア協会が会員企業を対象に行った調査では、登録販売者試験の受験予定者が3万2000人余に上った。同協会以外からの受験者を考慮すると、都市部など店舗が集中する都県では、受験者数が数千人規模に及ぶことが予想される。
それだけに各都道府県の薬務主管課にとっては、認定試験をいかに円滑に実施するか、そのための取り組みが共通の関心事となっている。現在は、その対応に苦慮しつつ、検討を進めているというのが実情のようだ。例えば、毒物劇物取扱者試験問題の共同作成などで実績のある九州8県では、登録販売者試験に関しても九州ブロックとして統一問題を作成し、試験を実施する方向であり、その具体化に向けた検討会も設置したと聞く。
今後、GLに沿って通知の発出、受験資格等に関する省令改正が行われ、試験の具体的な実施が都道府県に委ねられる。この秋以降、年度末にかけて、都道府県では来年度の予算編成が進められるが、そうした中で実施に向けた各自治体の具体的な対応が示されることになるだろう。
都道府県の薬務主管課では今後、試験問題の作成に始まり、試験日程の調整や試験会場の確保などを進めなければならない。初年度の試験実施に向けて、処理すべき問題は山積している。
事務作業の負担は非常に大きいものとなろうが、2009年度から始まる新しい医薬品販売制度は、地方自治体が最も大きな役割を担うことを認識し、意欲的に取り組んでもらいたい。