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安定株主拡大に妙手はあるのか

2007年8月17日 (金)

 6月に開かれた小野薬品の株主総会で「通常配当と併せて1株当たり700円の追加配当」を求める米投資顧問会社ブランデス・インベストメント・パートナーズの株主提案が否決された。3600億円余にも上る小野薬品の任意積立金が過大であるとして追加配当を求めるブランデスの株主提案の成り行きは、製薬業界のみならず多くの企業関係者の注目を集めた。

 その理由は、小野薬品の株主名簿上の株主ではないブランデスが、実質的な株主であるノーザン・トラスト・カンパニー・サブ・アカウント・アメリカン・クライアントの委託を受けて株主提案を行使するという、わが国初のケースが生じたからだ。

 小野薬品の取締役会では、会社法に基づく株主提案権行使の資格に照らし合わせた上で、ブランデスの株主提案を受理すべきかどうか慎重に検討し、株主総会の議案として取り上げることを決定した。この判断は「日本国内においては株主名簿上の株主でなくても株主提案できる」という先鞭となり、わが国の上場企業に画期的な影響を与える結果となった。

 今回の出来事が、今後、日本企業にどのような影響を及ぼすのか。外資ファンドや年金ファンドは異口同音に「われわれは中長期的な展望で投資している」と主張する。だが、これらのファンドに投資する個人投資家の大多数は、「早く利益を上げたい」という短期思考型だ。

 その結果、ファンドから実際に資金運用を委託されている投資顧問会社が、個人投資家の強い意向があればその意思を無視できなくなり、企業にとっては受け入れ難い様々な要求をファンドに成り代わって株主総会で提案してくる可能性が増加するものと予測される。

 小野薬品の是金社長も「万一、ブランデスの提案を受け入れることになれば、当社の将来にわたる事業発展のための戦略的投資に少なからず支障を来すことになる」とコメントしている。研究開発の一層の強化や戦略的アライアンスの推進によって、開発パイプラインの充実を図るには、どの製薬企業でもそれ相応の資金の手立てが必要となる。研究開発費は、製薬企業の命綱である。その命綱を削ってでも膨大な追加配当を求める投資顧問会社の要求は、製薬企業の存続そのものに影響を与えかねない。

 では、株主提案や企業買収も含めて、いざという時のために安定株主の比率を高めるための妙手はあるのか。

 エーザイと参天製薬、小野薬品と参天製薬、エーザイとスズケン、小野薬品とスズケン、東邦薬品など、製薬企業同士や製薬企業と医薬品卸との間で、株を持ち合う動きが活発化している。本来、株の持ち合いは取引関係者との絆を深めることが目的だが、安定株主の確保という副産物を生んでいる。だが、一般的に株の持ち合いは解消方向にあるし、株の持ち合いだけで安定株主を確保するのは不可能だ。

 エーザイや日本新薬、参天製薬が導入した大規模買い付けルールの遵守を求める買収防衛策の導入もその一つだが、その実効性については賛否両論がある。

 やはり、企業買収防止の王道は、時価総額を高める以外にないだろう。とはいえ、この方法とて企業買収を絶対に防止できるとは言い難い。莫大な資金を持つ海外の買収ファンドが相手ではひとたまりもないからだ。残念ながら、これらの方法を併せ技として駆使する以外手立てがないのが現状だ。

 企業が、自分たちの考え方を理解してくれる投資家を増やすにはIRの強化はもちろんだが、世の中でその企業がいかに役立っているかを訴求する地道な広報活動も忘れてはならない。




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