“
一般を対象とした各種の調査でも、何らかの健康食品を使用している、あるいは過去に使用経験があるとした人が、全体の607割に達するなど、近年は健康食品の利用が進んでいる。これに伴って、健康食品に関連すると思われる健康被害の報告も増加傾向にあるようだ。
最近ではインターネット販売、個人輸入などで健康食品などが容易に入手できる。自己判断で摂取を続けた結果、時に健康被害の起きることがあり、軽微なものから重篤な症状に至るケースもある。行政サイドの対応としては、健康被害が起きた場合には製品名、含有成分や被害状況などを公表し、消費者に注意を喚起するというのが現状だろう。
厚生労働省が「『健康食品』の確保に関する検討会」を設置したのも、健康食品をめぐっての健康被害など、トラブルの増加が背景にある。先月の初会合で厚労省は、▽健康食品の特性と現状を踏まえた安全性確保の取り組み▽安全な製品を消費者が選択できるような仕組み▽消費者への情報提供のあり方――などの検討課題を示した。今後は関係団体からのヒアリング、海外での事例なども参考にしながら幅広く議論を重ね、年度内には報告書をまとめる予定という。
こうした中で東京都は、早期に健康食品の危害を把握するため、東京都医師会や東京都薬剤師会の協力を得て、健康食品との関連が疑われる健康被害の情報収集事業に取り組んでいる。さらに都では医薬・食品・保健衛生関係者、学識経験者ら多数で構成する「東京都食品安全情報評価委員会」の中に、今年3月から健康食品による健康被害事例等を検討する専門委員会を新たに設置した。この専門委員会は、都医師会、都薬剤師会を通じて収集した情報について、評価・検討を行うことを目的としている。
健康被害事例専門委員会は先月、今年度第1回委員会を開いたが、座長を務める大妻女子大教授の池上幸江氏は、「こうした情報を集めていることに関し、まだまだ現場(医師会、薬剤師会)に周知されていない面もある。今後は時期を見て、データ等を現場に返すことで関心を持ってもらい、情報をできるだけ積極的に寄せてもらうようなシステムを構築することが大事」と感想を述べた。
さらに「因果関係とかが、必ずしも明確でない事例が多い。内容的な意味で十分な量の情報が集まってこないという点も問題といえる。非常に難しい課題とは思うが、どうやってこうしたデータをまとめていくか、これから少し試行錯誤しながら進めていきたい」と語っている。
確かに購入者にとって、医薬品と健康食品の区別がつきにくい製品もある。そのために医師や薬剤師等の専門家に相談することなく自分の判断で摂取し、被害が起きる場合もある。
セルフメディケーション推進ということで、自分の健康を自分で管理する方向が今後ますます強まるが、それは販売時の適切な情報提供とアドバイスがあってこその自己管理である。健康食品に関しては、店舗での確実な販売体制と共に、消費者が体調不良を感じて薬局等に相談に訪れた場合の情報収集体制の充実も急務の課題といえよう。
“