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今年4月現在の、医薬品卸経営状況が発表された。2004年度の薬価改定時の轍を踏まないよう、経済合理性に基づいた適正価格による適正利益の確保に努力した結果、売上総利益率8%台を取り戻した。また、経営努力による販管費縮減も奏功して営業利益率も1%台に回復するなど、経営指標は改善する兆しを見せている。
今回の数値を見るまでもなく医薬品卸の利益率は、製造業など他の産業種に比較して極めて低い。中間流通業であるための宿命といえばそれまでだが、各社はスケールメリットで売上高を拡大して利益率の低さをカバーし、企業の成長に不可欠な各種システムの整備、設備投資などに必要な経費財源を生み出し、生き残ってきたのである。
規模拡大の影響もあって卸の企業数は減少し続け、日本医薬品卸業連合会の会員数はとうとう130社を切ってしまった。
年商規模で内訳を見ると、1000億円以上が19社、500億円以上1000億円未満が17社、2000500億円が27社、残り半分の62社は200億円未満となっている。トップクラスは2兆円台、1兆円台であるのだから、とても医薬品卸という同じ仕事をしているとは思われないだろう。
アンケートの回収率を見ても、1000億円以上は9割が回答(現在は全社回答)しているのに対して、200億円未満は3割にも達していない状況であり、意識の格差は言うに及ばない。この寡占化は、新参者が入ってきて業界トップを狙うことなどほぼ不可能な市場を形成しており、ある意味では市場への自由参入を消極的に阻んでいるとも言える。
この状況は、諸外国とは異なる日本独特の薬価制度にも影響された厳しい卸業界の環境に対し、従事者数の減少度合いなどを見れば分かるように、「血の滲むような」ではなく「本当に血を流して」、換言すれば「尋常ならざる努力によって」生き残ってきた結果である。
現在、生き残っている医薬品卸の多くは、日本の医療にとって不可欠な存在となっている。
単なる医薬品物流ではない安全・安心・安定的な医薬品流通を実現して、MSに代表される情報提供・収集なども含め、既に確立された日本独自の医薬品卸機能を果たして国民医療に貢献している。その自信と誇りを持って、なお厳しい環境に立ち向かい、他に代え難い存在になるための努力が引き続き求められている。
医療用医薬品の流通改善に関する懇談会には、薬卸連の松谷高顕会長が参加しているほか、中央社会保険医療協議会・薬価専門部会にも渡辺自修常任理事が専門委員として参加している。
今月1日に行われた専門部会のヒアリングには松谷会長が出席し、薬価制度改革に向けた業界の意見として、基本的考え方から市場価格主義の尊重、調整幅のあり方、ベーシックドラッグの最低薬価についての要望、薬価制度の見直しに対する考え方を示し、そして、薬価改定の頻度については毎年改定に断固たる反対を主張した。
明日開かれる流改懇においては、メーカー、卸、有識者で構成された作業部会での検討内容が提示される予定である。来月にも予定されている流改懇での検討結果取りまとめは、中医協での薬価基準のあり方等の見直しの前提と位置づけられている。医薬品流通の諸課題改善に向け、重要な役割を担う卸が主体となった議論展開を期待したい。
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