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法規制、研究者に重い責任

2014年11月14日 (金)

 ディオバン事件等の相次ぐ臨床研究不正を受け、信頼回復に向けた議論を進めていた厚生労働省の検討会は、「臨床研究に法規制が必要」と結論づける報告書骨子案を了承した。未承認・適応外薬や広告に用いる目的の臨床研究に範囲を限定し、法規制することが固まった。対象となる臨床研究は、ICH‐GCPを適用することとし、二重基準の解消に一定の道筋がつけられることになる。厚労省は、年内に報告書をまとめ、国会に法案を提出する段取りを予定しているが、具体的な作業はこれからとなる。

 これまでも「臨床研究基本法」「被験者保護法」の制定を求める声が出て、臨床研究の法制化が検討されたことはあったが、結局は倫理指針の改定で済ませてきた経緯がある。それがディオバン事件が大きな引き金となり、法規制が決まった。製薬企業の法規制は対象外とされたが、既にノバルティスの元社員は起訴され、業界全体で資金や労務提供の透明性を高めるための自主努力が進められ、国の検討会に報告まで求めた。

 しかし、問題は研究者である。一見、法規制により臨床研究不正の再発防止に手を打ったことで一段落のように見えるが、ディオバン事件でデータ操作を行った研究者がペナルティーを受けることはなかった。それどころか、企業のせいにして、責任逃れに終始している研究者もいる。

 厚労省検討会で、医師の武藤徹一郎委員は、「ディオバン事件では大学側の真相が分かっておらず、大学、組織長の責任は重い。企業に比べて対応があまりに遅い」と批判した。法規制をめぐる議論の最終盤で、こうした意見が出たことを重視すべきだ。逆に言えば、今まで研究者に対し、厳しい目を向ける議論が少なかったのではないか。

 報告書骨子では、研究者等へのペナルティーについて、「学問の自由」との関係から直罰規定を避け、行政指導、改善命令等による是正で改善が図られない場合、罰則を適用すべきとした。もちろん、研究者には、専門家集団としての自律性(プロフェッショナルコード)の発揮が期待されるが、これまでのところ自律性が発揮されているとは言い難い。

 その点、ディオバン事件の反省を踏まえ、行政当局に調査権限を与えるよう求めているのは理解できる。ディオバン事件への対応が不十分だったからこそ、法規制が必要との声が上がり、国の検討会でも法規制することが必要と結論づけられた。今回のようなデータ改ざんを行った場合、研究者に科す罰則にも、厳しい観点が必要になってくるだろう。

 ディオバン事件では、研究者に罰則を与える法制度がないことが指摘された。企業の言いなりになって不正を行ったことは言い訳にならない。研究者の責任は極めて重いものだ。そのことを法案を作る過程でしっかり反映させていく必要がある。




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