医療用医薬品の販売包装単位へのJANコード表示が禁止される期限が、いよいよ半年後に迫ってきた。今年7月の工場出荷分から表示が禁止され、GS1データバーに一本化される。
PTP包装シートを100枚収納した箱など、卸売販売業者から病院や薬局に販売される最小包装単位である販売包装には現在、モノの照合に活用できるバーコードの一種として、JANコードとGS1データバーが併記されることが少なくない。
2006年の厚生労働省の通知「医療用医薬品のバーコード表示の実施について」を受け08年9月以降、JANコードに加えて、より小さな面積に多くの情報を盛り込めるGS1データバーの併記が義務化された。13年10月以降は、販売包装単位へのJANコード表示義務が解除された。こうした段階を経て15年7月以降はJANコードの表示が禁止される。
現在、受発注や棚卸、散薬・水薬鑑査、ピッキング、定数配置薬の管理などにJANコードのみを利用した情報システムを使っている病院や診療所、薬局では注意が必要だ。無用な混乱を避け、医療の安全性を確保するためにも、GS1データバーに対応したシステムに変更することが求められる。
一方、注射薬のバイアルやアンプルなど調剤包装単位に表示されたGS1データバーを、積極的に活用する姿勢も重要だ。既に特定生物由来製品、生物由来製品、注射薬の調剤包装単位へのGS1データバーの表示は、08年9月から義務化されている。
病棟への注射薬の払い出しや混合調製時に、取りそろえた注射薬のGS1データバーをバーコードリーダーで読み取り、処方オーダと照合することによって、取り違えや規格間違いを防止できる。
昨年末に大阪府立急性期・総合医療センターで、誤って筋弛緩剤を投与した入院患者が死亡した事故があった。各種報道によれば医師は抗菌薬「マキシピーム」を処方したが、若手の薬剤師は誤って筋弛緩剤「マスキュレート」を病棟に払い出してしまった。病棟でも看護師が筋弛緩剤と気付かずに投与したという。
詳細は不明だが、払い出す注射薬が処方オーダと合っているかどうかを、人間の目だけでなく、GS1データバーを読み取って機械的に照合する情報システムの重要性が、改めて浮き彫りになった事故だといえよう。
このほか、内服薬と外用薬の調剤包装単位へのGS1データバーの表示が、今年7月の工場出荷分から義務化される。表示済のPTPシートが既に各製薬会社から登場している。1枚のPTPシートの1カ所にGS1データバーを表示するケースが多いようだ。
この表示は、ピッキングや取りそろえ後の鑑査、持参薬鑑別などの場面で活用できるかもしれない。具体的な活用方法を確立することも、今後求められる。