厚生労働省は、医薬食品局の2015年度予算案に「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点推進事業」の継続実施(2億3200万円)を盛り込み、このうち、新規で薬局・薬剤師を活用した健康ナビステーション(仮称)の基準作りを検討する経費として590万円を計上した。
基準については、薬局が揃えるべき一般薬の品目数などが要件に盛り込まれるのではないかなどの憶測が一部で飛び交っているようだが、大事なのは地域の実情を踏まえた機能強化を行うこと。
基準は相談薬局になるための手段であり、目的ではない。一般薬や衛生材料はあくまでも相談に対応する上で最低限、用意しておかなければならないツールの一つと捉えておいた方が良さそうだ。
同事業には、電子お薬手帳を活用した「e‐かかりつけ薬局構想」もある。現行のお薬手帳に記載される医療用医薬品の服用歴に加え、一般薬の購入履歴や検査データ、日常のバイタルの記録など個人の医療・健康情報を電子的に一元管理し、自身の健康管理に役立てるのが目的だ。
国は健康寿命の延伸に向け、セルフケア・セルフメディケーション推進の旗を振っている。今後、その役割を担う薬剤師には、これまで以上に高度な判断力や問題解決能力が求められるが、新設ラッシュに端を発した薬学部、ひいては薬剤師の質低下は頭の痛い問題だ。
国試合格率の低下や留年の問題もさることながら、一部の関係者からは、学生が研究をしなくなっていることを危惧する声も上がっている。
研究は、4年制薬学部の研究者養成コースが行うもので、6年制の薬剤師養成コースでは積極的に行う必要がないといった風潮だけではなく国試対策に追われ、教員が研究に時間を割けなくなり、学生を指導できなくなっている大学が増えていることも要因の一つになっているようだ。
国試に合格するための教育に大半が費やされた学生と、これまで得た知識をベースに研究も行ってきた学生では、どちらにより多くの問題解決能力が備わっているかは一目瞭然だ。
いずれにせよ、薬局では地域医療、病院ではチーム医療に参画できなければ、薬剤師は不要とのレッテルを貼られてしまう。
政府の規制改革会議は、3月の「公開ディスカッション」のテーマに、医薬分業における規制の見直しを取り上げることを決めた。医薬分業の効果に問題意識を示した格好だ。日本医師会も薬局での簡易検査には、やや否定的だ。
医薬分業の意義を問う声が大きくなる中、残された時間はわずかしかなく、いずれの試みも失敗できないということだけは明確だ。薬局は健康情報拠点、病院では病棟業務の実績づくり、大学関係者は大幅な定員削減といったところだろう。やるべきことは、はっきりしている。あとは進むか止まるかだけだ。