昨年4月の消費税の8%への引き上げは、買い控えや節約志向など生活者の消費マインドに大きな変化をもたらした。その結果、ドラッグストア店頭の販売実績などにもマイナス影響を及ぼし、半年以上経過した後も、対前年比の数値まで回復できていない企業も少なくない状況にある。そうした中で、ドラッグストア関係者らの間で期待が高まっているのが、訪日観光客(インバウンド)需要である。
先月20日、日本政府観光局(JNTO)は2014年(1~12月)の訪日外客数が前年比29・4%増の1341万4000人となり、過去最高となったことを発表。また、観光庁からも14年の訪日外国人旅行消費動向調査の速報値として、旅行消費総額が前年比43・3%増の2兆0305億円と初めて2兆円を超え、一人当たりの消費額(10・7%増、15万1374円)と共に過去最高額だった。
特に、費目別旅行消費額では、「買い物代」が全体の35・2%を占め国内交通費や宿泊費を抑えて金額的にトップに躍り出た。このためか、1~2月にかけて行われた医薬品、医療品卸が主催する商品展示会などでも、インバウンド消費の動向に注目した提案が目立った。そうした卸関係者からは「外国人旅行者の数が日本の人口の10%を超える状況にあり、市場として手を打たなければいけない」との声も聞かれた。
インバウンド需要は、円安に伴う日本旅行への割安感に加えて、昨年10月から実施された改正「外国人旅行者向け消費税免税制度」が数値を押し上げた要因でもあろう。同制度は従来、免税販売の対象でなかった消耗品(食料品、飲料品、薬品類、化粧品類、その他消耗品)を含めた、全ての品目が消費税免税の対象となる。既に、ドラッグストア企業の中には、外国人観光客が訪れる繁華街などに出店する店舗に免税カウンターを増設したり、通訳を配置するほか、中国語等を記したPOPなどを掲示して、店舗で買物がしやすい体制を整える店舗もある。
一方で、外国人観光客が、家庭薬製品を中心に医薬品を購入する傾向も高まっている。日本語表記のパッケージが好まれるというが、医薬品は適正使用の懸念もある。その対策として、家庭薬メーカーで構成する日本家庭薬協会では、今後、日本語を読めない外国人向けに医薬品情報データベースの多言語対応の検討も視野に入れている。
政府は昨年6月に20年の東京オリンピック開催の年をめどに、訪日外国人の2000万人達成を目標とする行動計画をまとめるなど、今後、さらに訪日外国人の数を増加させる施策を進めていく考えである。少子高齢化と共に、シュリンク傾向に向かう国内市場の中にあって、一つの大きな潜在的市場であるインバウンド需要を、いかにしてドラッグストア等で獲得していくことができるか、今後の動向にも注目したい。