第29回日本医学会総会2015関西が「医学と医療の革新を目指して―健康社会を共に生きるきずなの構築」をメインテーマに、4月11~13日まで京都市内で開かれる学術プログラムを中心に開催される。
今回の総会は、従来の1都市開催ではなく、関西エリアそれぞれが有する特徴あるライフサイエンス分野でのアドバンテージを活用しながら、医学・医療分野のみならず、他産業との連携による新産業創出を模索。加えて、医療関係者と一般市民が、「健康社会づくり」について語り合う場を提供することを大きな特徴としている。
これらの開催コンセプトに従って、4月11~13日まで京都市での学術講演・学術展示、3月28日から4月5日まで神戸での一般公開展示、大阪での「医と健康フォーラム2015」(連携イベント)など、オール関西エリアで各種イベントが実施される。
8年ぶりとなる総会では、少子超高齢社会の解決に向けた先端医療などの分野横断的な議論を展開すると共に、医と産業との連携による新産業創出の可能性が探られる。
中でも、特に注目されるのが、医と産業との連携による新産業の創出だ。学術プログラムの20の柱において“医と産業の連携”を打ち出しており、特別企画でも「健康社会を支える医と産業の新しい連携―新医療時代の開花に向けて」のシンポジウムがプログラムに盛り込まれている。
新しい医療関連産業は、薬や医療機器だけでなく、高齢者用住宅、安全セキュリティ産業、情報産業(ビッグデータの活用等)、高齢者用自動車、生活支援ロボット、食品製造と宅配、高齢者向け保険、高齢者の雇用などがあり、これらの分野での画期的な成果が待ち望まれる。
今般、わが国では、産業や人口の東京への1極集中が大きな問題となっている。日本の全人口のうち東京圏が占める割合は約30%にも上っており、年々増加傾向にある。
その一方で、2035年の大阪、兵庫、京都の人口動態は、日本の平均よりも減少する見込みにある。とはいえ、関西には、有意なライフサイエンス分野の研究を生かし、少子高齢化社会に対応する健康社会を支える次世代産業の創出を世界に先駆けて始める土壌が整っている。
具体的には、個性ある大学が多く、基礎研究の分野でたくさんの優秀な人材を輩出している。複数のノーベル生理学・医学賞受賞者をはじめ、米国で最も権威ある医学賞のラスカー賞受賞者も7人のうち6人を関西の大学出身者が占めている。これらの基礎研究の力を産業に生かさない手はないだろう。
関西圏が、昨年5月、安倍政権が成長戦略の目玉に掲げる国家戦略特区の一つに指定されているのも大きな強みだ。関西の人口減少に歯止めをかけるには、関西が力を合わせて健康・医療関連産業を伸ばしていく以外に術はないと言っても過言ではない。
医学会総会2015関西を契機に、新しい医療関連産業創出の気運が盛り上がっていくことを期待したい。