12日に規制改革会議の公開ディスカッションが開かれた。テーマの一つは「医薬分業における規制の見直し」。医療機関と薬局が構造的に離れていなければならない、とする規制の見直しについて関係者が意見を述べた。
現在の保険薬局および保険薬剤師療養担当規則では、保険医療機関と保険薬局の一体的な構造や経営を禁じるほか、医療機関と同一の建物または敷地にある薬局については保険薬局の指定を行わない、などと規制されている。
なぜこれを見直す必要があるのか。日本医師会の今村副会長は、車イスの患者が冬の寒い日に公道を渡って薬局に出向くのは「国民目線で見るとおかしな仕組み」と例示した。規制改革会議の委員からも門内薬局の設置を求める声が上がった。病院内にコンビニが入居するように、同じ敷地や建物に外部の薬局が同居することによって移動距離が短くなり、患者の利便性が高まるという論法だ。
しかし、よく考えてみればこの論理には穴がある。現行制度下でも距離的な患者の不利益は解消できるからだ。移動に困難を伴う外来患者には例外的に院外処方箋を発行せず、院内で薬を渡せばそれで済む話だ。実際に、院外処方箋の全面発行に踏み切っていても、足腰が悪い患者や子供連れの患者などには、そのように対応している病院は少なくない。
強制分業を実施しているならともかく、現行制度では医療機関は院外処方箋を発行するかどうかを選択できる。規制を緩和せずとも、移動が困難なら院内処方箋で対応可能だ。それなのに規制を緩和せよとは、論理的に無理がある。
苦しい論理を押し出す裏に透けて見えるのは真の狙いだ。大手調剤チェーン薬局などが病院前の土地や賃貸物件を高額で競り落としたという情報を時々耳にする。枠外の地主を儲けさせるのではなく、薬局から賃貸料や土地代を得て医療機関側に正々堂々と環流させる仕組みを作りたいのではないかと邪推する。
かかりつけ薬局として患者を一元的に管理し、医療の質の向上や安全性の確保を実現するのが、医薬分業のメリットの一つだ。医療機関と同一の建物や敷地内にある薬局が果たして、患者の一元的な管理を行えるのかと疑問に思う。医薬分業とは言いづらい体系に、医薬分業と同等の支払いを強いられる患者の不利益は考慮しないのか。
門内薬局になれば患者はさらに集中する。地域に点在する薬局の経営は苦しくなり、地域医療の担い手としての薬剤師は衰退する。それが本当に国民のためなのか。
国民のためと言うのなら、より効果的な医薬分業制度を確立するのが本筋だ。討議の場ではリフィル処方、電子的な医療情報共有化の推進を求める声もあった。規制が壁になって薬局薬剤師がその能力を十分に発揮できないのであれば、それを緩和するという議論もあっていいはずだ。