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激動の薬業界、今こそ指導力を

2006年05月17日 (水)

 日本の医薬業界は、使い古された言葉で表せば「激動の中」にある。製薬企業や医薬品卸の激烈な再編劇は言うに及ばず、グローバル化の荒波も押し寄せてきている。いま医療関連企業は国民の生命、健康保持に貢献するという崇高な使命を果たしながら、いかに生き残っていくのか、その明確な方向性と戦略を公に示していくことが求められている。

 景気の閉塞感が蔓延した近年の日本では、企業がさらなる発展を遂げるため、あるいは生き残りをかけてのM&Aなどにより、新しい企業体も数多く出現した。薬業界もここ数年で統合・再編が一気に進み、旧来から聞き慣れた、親しんだ社名が消滅するケースも目立ってきた。往年の業界人の中には、やむを得ない時の流れと思いつつも、一抹の寂しさを感じる人は少なくないだろう。

 有用な候補化合物の発見・発明、それを医薬品として開発するため、動物実験を経てヒトに対する有効性と安全性を検証する治験、製造承認申請、的確な品質管理下での製造、安心・安全・迅速かつ安定的な供給という役割を持つ物流、最終消費者である患者への処方・調剤・販売。医薬品産業はこうした一連の流れからなる幅広い領域に、膨大な数の企業が存在して成り立っている。

 医薬品メーカーという一つのカテゴリーだけをとっても、新薬開発型のグローバルメガファーマ、専門領域に特化したスペシャリティファーマ、ジェネリック医薬品の専門メーカー、一般用医薬品や健康食品・サプリメントまで含めた事業を展開するメーカーまで、実に多様な形態がある。

 開発分野に至ってはメーカー内の研究開発部門のみならず、多種多様な開発業務を受託するCROや、治験サイトを支援するSMOの役割と必要性に対する認識は、日本に出現し始めた時に比べ、すっかり定着してきた感がある。ただしSMOについては現況を見る限り、今後も企業・業態としての成長を続けていけるか否か、今が正念場に差しかかっていると思われる。

 こうした多様な業態を抱えているだけに、健全な発展を目指すためには、全体を見渡すことのできる指導力が求められよう。その意味で多くの業界団体に対する期待感は大きい。

 日本における企業や団体は、その多くが戦後に誕生したことから、ここ10年くらいの間に創立50周年、60周年という節目を相次いで迎えた。「十年一昔」なる言葉もあったように、以前は10年を一つのレンジとして捉える面があったが、現在の日本では、数年先、場合によっては来年の姿さえ見えないような、五里霧中にある企業も少なくない。その意味においても毎年訪れる創立記念日は、ここまで組織として、あるいは企業体として生きてきた厳然たる証である。

 戦前の1941年1月に創立された日本医薬品卸業連合会は、今年で65周年という節目を迎える。60年から65年は、わずか5年間に過ぎないという見方もできる。しかし、この5年間に医薬品流通業界に起こった、多くの劇的な出来事を振り返るならば、今後の5年間に何がどう動くのかを予測することは、極めて困難だと言わざるを得まい。これまでの曲折な状況を乗り越え、65年の歳月を重ねてきたのは、会員が利己に走らず、一致団結して医薬品流通業界全体を発展させようという同一ベクトルの大局的な考えが、根底にあったからに他ならない。

 昨年には、長年の懸案だった価格未妥結・仮納入問題、返品問題について改善の兆しが示され、今年3月には厚生労働省から相次いで関連通知が発出された。いよいよ具体的な対策が実行に移される段階にきたが、まだ解決すべき課題は多い。古希に向け、薬卸連の一層の活躍を期待したい。



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