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癌患者の疼痛緩和ケアを治療初期段階から進めるため厚生労働省は、日本で導入が遅れているWHO方式の治療を前進させる体制整備を促す方向で診療(調剤)報酬上評価することを、中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会に提案した。その中には、在宅での薬剤師による麻薬の服用、保管、廃棄など麻薬管理に対する評価を手厚くすることも盛り込まれている。同小委では、麻薬管理を含め入院、外来、在宅での初期段階から緩和ケアを推進し、それを評価していく方向で一致、今後内容を詰める。議論では、薬局の麻薬供給体制の強化を求める意見が出た。
今回の基本小委では、癌対策に対する診療(調剤)報酬上の評価が取り上げられた。癌対策は、基本法が制定され、同法に基づく「がん対策推進基本計画」で、より専門的な治療をどこでも受けられる体制整備を進めることになっている。その中で緩和ケアは、末期患者だけでなく初期段階から入院、外来、在宅と切れ目なく実施できるようにすることとなっており、今回、実施を手当する診療(調剤)報酬についても検討することになった。
しかし、日本の疼痛緩和治療に用いる医療用麻薬の消費量は、先進諸国の数分の1から10分の1と非常に少ない点を、同省は問題視。
そこで、痛みの発生前から、鎮痛剤や医療用麻薬などを患者の状態に合わせて必要十分量を計画的に、きめ細かい用量設定をして疼痛緩和治療していくWHO方式に従い、「計画的な医学的管理を継続して行い、かつ、療養上必要な指導を行うことを評価することで、癌患者が質の高い療養生活を送ることができる体制を整備していくべきではないか」と提案した。
その中では、緩和ケアチームを充実し、入院から外来、在宅とスムーズに進められる体制の整備のほか、疼痛緩和治療での麻薬の重要性から「在宅における麻薬の服用、保管、廃棄などを確実に行うことが必要であり、薬剤師の行う麻薬管理等の支援をさらに進めるべきではないか」と指摘。より手厚い評価を求めた。
基本小委は、厚労省の提案を受け入れた。山本信夫委員(日本薬剤師会副会長)は、医師、看護師と共に「薬剤師が働ける仕組みや、入院と外来・在宅の間を橋渡しする薬剤師に対する評価軸もつくってもらいたい」と要望した。
またWHO方式を進めるためには、地域の薬局、薬剤師の役割が重要だとの意見が、診療側、専門委員(看護師)から出た。薬局での麻薬の供給体制が不十分とも指摘されたが、山本委員は、麻薬を取り扱いできる薬局は6割以上に上り、「在庫の不足があった場合でも、近隣から調達する仕組みなどを整えてきており、(指摘された点は)解消されてきている。今後さらに充実したい」と答えた。