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急がれる「セルフM」の環境整備

2007年10月15日 (月)

 大衆薬を用いて軽い病気やケガの手当てをしたり、自らの健康を自己管理していく――このセルフメディケーションを国民一人ひとりが実践していく環境づくりが、「長寿大国」から「健康大国」への転換が大きな課題のわが国にとって急務といえる。

 業界団体の日本大衆薬工業協会では、以前よりセルフメディケーションの認知度について、1000人ほどを対象に消費者アンケートを行っている。この中では、セルフメディケーションの言葉について、「内容も知っている」「言葉だけ聞いたことがある」を合わせると、認知度は約70%くらいになる。ここ数年も少しずつではあるが増加していることから、言葉の認知が広まりつつある傾向がうかがえる。

 先頃、都内で一般用医薬品セルフメディケーション振興財団(理事長佐藤誠一氏)が調査研究助成等の対象者発表とシンポジウムを開催したが、この中でセルフメディケーションに関するいくつかの研究報告が行われた。

 「時代の変化に対応したセルフメディケーションへの期待」と題し、城西大学の森本雍憲教授がOTC薬の使用等に関する調査結果を報告したが、その内容を少し紹介してみる。

 同調査は、質の高いOTC医薬品が提供される環境下にあるのか、国民のニーズに対応した環境にあるのかを探る目的で、専門知識のない一般の人たちにアンケートを行ったもの。セルフメディケーション認知度に関しては182人が回答したが、「言葉も意味も両方とも知っている」は18・7%、「言葉は聞いたことがあるが、意味は知らない」は31・9%という結果であった。

 つまり約半分の人(49・4%)は「言葉も意味も知らない」と回答しているわけである。もちろん一般へのアンケートでは、対象者の生活意識や職業、そして設問への真剣な対応等によって多少数値も変わってくるだろうが、セルフメディケーションに関して半数弱が「知らない」というのが、より実態に近いような感を受ける。

 なお、同調査ではスイッチOTC薬についての認知度も聞いているが(186人が回答)、こちらは「言葉も意味も知らない」が89・2%と、約9割にも上っている。薬業界では積極的に「セルフメディケーション」「スイッチOTC薬」の浸透に向けたアピールを続けているが、まだまだ一般への十分な理解は得られていないと捉えるべきで、さらなる検討の余地は少なくない。

 薬事法改正に伴う一般用医薬品の新たな販売制度の施行が、目前に迫ってきている。生活者にとって、より安全で使いやすい医薬品の開発・提供から、販売する側のスキルアップや店頭での情報提供のあり方など、総合的な環境整備が急がれている。セルフメディケーション意識の浸透、そして拡大には小中学校の学校教育や、消費者教育から十分に行っていくことも当然重要になってくる。

 行政、製薬企業、そして薬剤師などの専門家がそれぞれの役割を果たすことが、国民の健康に寄与するだけでなく、一般用医薬品市場拡大の鍵を握っていることを、改めて認識する必要があろう。



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